研究課題/領域番号 |
16K20120
|
研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
柴田 志保 福岡大学, 医学部, 助教 (50708063)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 複合性局所疼痛症候群 / 抗TNF-α抗体 / 局所投与 |
研究実績の概要 |
本研究は、複合性局所疼痛症候群(CRPS)の動物モデル実験系を確立し、その病態機序の解明と新規治療法の開発を目指すものである。平成28年度は、CRPSモデル動物の作製に取り組んだ。 当初の計画では、成熟ラットの坐骨神経を部分結紮し、患肢をギプス固定によって2週間不動状態としてCRPSモデルを作製した上で、局所静脈内ブロックの手法で低容量のTNF-α阻害薬を投与し、有効性と安全性を検討する予定であった。 TNF-α阻害薬としてインフリキシマブ(抗ヒトTNF-αモノクローナル抗体)を投与する計画であったが、齧歯類への有効性が確立していないため、齧歯類への有効性が確立している抗マウス/ラットTNF-αモノクローナル抗体(市販の中和抗体)の投与に変更することとした。その結果、当初の予定よりも薬剤購入費が高騰したため、モデル動物をラットからマウスに変更した。マウスでは、局所静脈内への投与が困難であることから、神経周囲への局所投与によって対応することにした。 現在までに、マウスの坐骨神経を部分結紮し、患肢をギプス固定によって2週間不動状態としたCRPSモデルを作製した。このCRPSモデル動物ではCRPS様の色調変化、腫脹、痛覚過敏が発現することを確認した。また、今回作製したCRPSモデルマウスでは、従来の坐骨神経結紮モデル動物では痛みが消失する時期にも痛覚過敏が持続することも確認できた。薬剤の投与方法としては、マイクロシリンジを用いてトリパンブルーを注入することで、坐骨神経周囲に薬剤を局所投与する手技を確立した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CRPSモデル動物をラットからマウスに変更したことで、結紮に用いる物品の選定、顕微鏡下手術や坐骨神経周囲への薬物局所投与の手技の確立が必要となり、本格的な実験の開始が少し遅れた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、確立したCRPSモデルマウスにマイクロシリンジを用いて抗TNF-α中和抗体を局所投与し、機械刺激に対する感覚過敏の程度(治療効果)と結紮した坐骨神経の組織におけるTNF-α濃度の変化(病態機序)を検討する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は、研究計画の変更によって、本格的な実験の開始が遅れたために、使用額が当初の予定よりも少なくなり、次年度への繰越が発生した。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、抗マウス/ラットTNF-αモノクローナル抗体(市販の中和抗体)の投与や神経組織内のTNF-α濃度測定などを予定しており、全体では、当初予定した程度の金額を要するものと思われる。
|