膀胱癌においては、30年余にわたり治療戦略を劇的に変化させる腫瘍マーカーや治療法の発見がなかった。研究代表者は他の悪性腫瘍に発現している細胞膜タンパク質であるGPNMBに着目し、これまで膀胱癌においてGPNMBが浸潤能に影響していることを明らかにした。 GPNMBに対する抗体は開発されて実験室では使用できるが、抗体は一般的に分子量が大きく、標的が細胞外もしくは細胞表面に限られること、製造コストが高いこと、特異度が安定しないなどの問題点がある。一方で、環状ペプチドは化学的に安定で合成コストも抑えることができるが、標的に特異的に結合するペプチドのスクリーニングに課題があり使用が一般化していない。近年それらの問題を解決した環状ペプチドの精製とスクリーニング技術が開発されたため、本研究ではGPNMBに特異的に結合する環状ペプチドを作成すること、ならびに標識や治療薬を付加することで新たな診断法、治療法の開発を目的として研究を行った。 まずGPNMBの重要な機能的ドメインとされるhemITAMに対するペプチド合成を行うため、GPNMBならびに機能喪失点変異GPNMBタンパク質を精製した。次に、GPNMBをはじめとして特異タンパクに結合する特殊環状ペプチドをスクリーニングするための発現ベクターを作成することができた。 GPNMBならびに、機能喪失点変異GPNMBに特異的な結合をする環状ペプチドを合成した。そこで得られた候補ペプチドに対してスクリーニングを行い、最終的にGPNMBに特異的に結合する特殊環状ペプチドを得ることができた。また、それらの特殊環状ペプチドを用いて、in vitroで膀胱癌細胞での細胞内分布について調べた。現在、標識や治療薬を付加することで新たな診断法、治療法の開発にむけて研究を継続している。
|