研究課題/領域番号 |
16K20125
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
加藤 繭子 千葉大学, 医学部附属病院, 医員 (80733857)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マイクロRNA / 去勢抵抗性前立腺癌 / 癌抑制遺伝子 / 癌遺伝子 |
研究実績の概要 |
去勢抵抗性前立腺癌を適応とする、新たなアンドロゲン合成阻害薬が開発されている。しかしながら多くの前立腺癌は、男性ホルモンを遮断するホルモン遮断療法に対する耐性機構を獲得して再発や遠隔転移をきたす。前立腺癌の転移機構を解明する事は、将来の治療法の開発へ繋がる知見をもたらす。ホルモン遮断療法に治療抵抗性を示し、遠隔転移をきたす癌細胞に対し、ゲノム科学的手法で解析を行うことは、治療抵抗性や遠隔転移の分子メカニズムを理解する上で重要である。ヒトゲノム中には、マイクロRNAと呼ばれる19-23塩基の低分子RNA分子が存在する。この機能性RNA (タンパクコード・非タンパクコード)は翻訳阻害や直接分解によりその発現を制御している。マイクロRNAの特徴として、1つのマイクロRNA は、多くの癌関連遺伝子により制御され、1つの癌関連遺伝子が多くのマイクロRNAにより制御される。つまり、マイクロRNAと癌関連遺伝子が非常に複雑な分子ネットワークを形成していると考えられる。癌に関与するマイクロRNAを起点とした分子ネットワークを探索することにより、癌細胞の特性を見出すことができる。本研究では、ホルモン遮断療法に対して、治療抵抗性を獲得した去勢抵抗性前立腺癌組織を用いて、RNA-sequenceにより、マイクロRNA発現プロファイルを作製した。去勢抵抗性前立腺癌組織において、発現が抑制されているマイクロRNAに着目し、機能解析を施行した。その結果、miR-145-5p、miR-145-3p、miR-150-5p、miR-150-5pが癌抑制機能を有する事を認めた。マイクロRNAの生合成においては、passenger strandは、機能しない事が一般的であるが、本結果は、マイクロRNAのguide strandおよび、passenger strandが、共に、癌抑制型マイクロRNAとして機能している事を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ホルモン遮断療法に対して、治療抵抗性を獲得した去勢抵抗性前立腺癌組織を用いて、去勢抵抗性前立腺癌・マイクロRNA発現プロファイルを作製した。このプロファイルに基づき、癌組織で発現が抑制されている新規癌抑制型マイクロRNA候補を多数見出している。マイクロRNAの機能解析から、これらのマイクロRNAは、前立腺癌において、癌抑制型マイクロRNAであることを証明した。現在、ゲノム科学的手法を駆使して、癌抑制型マイクロRNAが制御する「癌促進型遺伝子」を探索中である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で作成した、去勢抵抗性前立腺癌・マイクロRNA発現プロファイルを用いて、癌組織で発現が抑制されているマイクロRNA候補を多数見出した。ゲノム科学的手法を駆使して、癌抑制型マイクロRNAが制御する「癌促進型遺伝子」を探索し、機能解析を行う。癌抑制型マイクロRNAであることが明らかになったマイクロRNAについては、マイクロRNAが制御する分子ネットワークの探索を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
他の癌腫のマイクロRNA解析と消耗品・核酸試薬が共有できたため、研究費の節約が可能であった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年と同様に、マイクロRNA解析と消耗品・核酸試薬を購入する。
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