研究課題
前立腺癌の臨床において、アンドロゲン感受性を失い、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)に至った症例の治療は難渋する。CRPC細胞は、各種治療に対して抵抗性を獲得して、リンパ節や骨などの臓器に遠隔転移をきたす。ホルモン遮断療法に治療抵抗性を示し、遠隔転移をきたす癌細胞に対し、ゲノム科学的手法で解析を行うことは、治療抵抗性や遠隔転移の分子メカニズムを理解する上で重要である。CRPCの予後を改善する画期的な治療は未だ開発されておらず、CRPCに至った患者の予後は不良である。CRPC細胞において、どの様な分子経路が活性化し、CRPC細胞が治療抵抗性を獲得したか探索する事は、本疾患の革新的治療法に有用な情報を提供すると考える。本研究では、CRPCに至った患者の剖検検体から、次世代シークセンサーを用いて、機能性RNA(マイクロ RNA、タンパクコード遺伝子、タンパク非コード遺伝子)発現プロファイルを作成した。マイクロRNAと癌関連遺伝子は相互に制御されており、非常に複雑な分子ネットワークを形成していると考えられる。マイクロRNAを起点とした、CRPC細胞内の分子ネットワークを探索することで、治療抵抗性を示す分子経路を見出すことができると考える。本研究では、ホルモン遮断療法に治療抵抗性を示した去勢抵抗性前立腺癌組織を用いて、RNA-sequenceにより、マイクロRNA発現プロファイルを作製した。去勢抵抗性前立腺癌組織において、発現が抑制されているマイクロRNAに着目し、機能解析を施行した。その結果、miR-205-5pが癌抑制機能を有する事を認めた。無再発生存期間の短縮に寄与する、miR-205-5pの標的遺伝子について検討した。前立腺癌細胞株で最も発現が低下していたHMGB3は、CRPCで発現が上昇しており、新たな分子メカニズムを解明する鍵となると考えられた。
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