膀胱上皮組織の機能において新規cAMPセンサーであるExchange protein directly activated by cAMP (Epac)の関与が注目されている。本研究において、様々な生物学的プロセスにおいて不可欠である、セカンドメッセンジャーcAMPのターゲット分子の一つであるEpacの膀胱における発現を、蓄積された臨床データの利用可能なヒト組織にて比較検討した。閉塞膀胱および正常膀胱それぞれにつき膀胱上皮組織、膀胱平滑筋に分けて発現を比較したが、Epac1、Epacd2ともに有意な差を認めなかった。膀胱上皮機能の一つである上皮細胞内のdiscoidal/fusiform-shaped vesicles が伸展刺激などに応じて細胞壁へfusionし膀胱上皮の内腔表面積の拡張を特殊改良したUssing chamberを使用し膀胱上皮表面積の測定も行ったが、正常膀胱と閉塞膀胱において信頼のおけるデータを採取することが不可能であった。以上よりEpacが膀胱に発現し、Epacが膀胱上皮表面積の拡張に関係しているものの、前立腺肥大症などに伴う下部尿路症状を呈する病的状態においては発現に変化はなく今後のこのEpacをターゲットとした研究を拡大し治療薬の開発、ならびに臨床応用に直結する可能性は低いと思われた。
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