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2017 年度 実施状況報告書

下部尿路微小循環障害の実験系確立とTRPチャンネルの微小循環に対する役割の検討

研究課題

研究課題/領域番号 16K20129
研究機関信州大学

研究代表者

皆川 倫範  信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 講師 (60638873)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワード下部尿路 / 膀胱 / 微小循環障害 / ニコチン / 冷えストレス / PDE5阻害剤 / 漢方薬
研究実績の概要

本研究での主たる評価項目は微小循環障害である。微小循環障害は、レーザードップラー血流測定装置(オメガゾーン)を用いて、ラット膀胱の血流を測定するものである。侵襲を加えて血流を低下させ、治療介入をおこなって改善の有無を評価するものである。今回我々は、二つのモデルで膀胱の虚血を引き起こした。ひとつは、冷えストレス実験で、ラットをゲージごと冷蔵庫に投入するものである。もうひとつは、ニコチンによる末梢血管収縮作用をみるものである。前者ではオメガゾーンでの直接観察は不可能であったが、冷えストレスにより頻尿が引き起こされた。それに対して大建中湯での治療介入をおこなった。大建中湯は漢方薬で、腸管血流の改善により便秘を軽快させるとされている。今回我々は、膀胱血流も増加させるであろうと仮説をたてて、それを検証する実験をおこなった。結果として、大建中湯は冷えストレスによる虚血は低減していた。冷えストレスのない状態では、コントロール群に比べて、膀胱血流が増えていた。一方、ニコチンにより頻尿になることがあきらかになった。ニコチンは膀胱上皮の脆弱化を引き起こすと考えられた。その病態を明らかにするため、膀胱血流の観察を行ったところ、コントロール群に比べて虚血であることが明らかになった。また、タダラフィルにより血流が増多し、頻尿が改善する結果となった。上記の内容は、2018年の日本泌尿器科学会総会と、泌尿器科漢方研究会で発表を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

動物実験レベルで、ニコチンと冷えストレスによる臓器虚血を明らかにした。次の段階としては、虚血のメカニズムの証明と、虚血の結果の解析である。虚血により、頻尿になるには、幾つかのプロセス(尿路上皮の障害や受容体の変化)を経て病態に至っていると考えられる。そのため、多角的な検討を行って、病態解析を詳細なものにする必要がある。

今後の研究の推進方策

すでに、2つの微小循環障害動物モデルの作成に成功した。今後の方針は、治療介入の更なる検討と、遺伝子レベルでの解析を追加することである。まず、血流に影響を及ぼす可能性がある薬剤として、猪苓湯とα1遮断薬の使用を検討している。猪苓湯は漢方薬で、主に抗炎症効果があるとされているが、作用機序は不明な点が多い。一方で、虚血が誘引とされる慢性前立腺炎に効能があるので、血流への影響が期待される。その点を明らかにする研究を行う予定である。また、α1遮断薬は、膀胱・尿道の平滑筋に作用して尿道抵抗を落とすことが主作用とされているが、血管平滑筋への作用に注目して、膀胱血流の変化について検討を行う。また、遺伝子レベルとしては、虚血のマーカーであるHIFの発現を観察し、治療介入の意義を明らかにする。また、Transient receptor potential(TRP)の関与をみるべく、免疫染色とPCRを行い、侵害受容体との関連を検討する。

次年度使用額が生じた理由

本研究では、モデルの作成と治療介入という、主に二つのステップがある。実験モデルの作成に予想以上の時間が費やされた。主に、薬物の効果がでるまでの時間によるものである。具体的には、漢方薬の効果発現には、ある程度の時間がかかった。本研究では4週間かかった。従って、急性反応をみる研究には不向きで、本来あった急性微小循環障害のモデルが使用できなかった。また、炎症と微小循環障害についての研究も難渋した。炎症が強すぎると薬剤の効果が不明になるため、用量の設定に時間がかかった。さらにいえば、ラットや薬剤を予想以上に使用することになった。次年度では、完成されたニコチンモデルと冷えストレスモデルを用いて治療介入を行うが、その為に次年度使用額を使用する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2018 2017

すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] ニコチンは膀胱における尿路上皮の低酸素化とバリア機能の変化をもたらし頻尿をきたす2018

    • 著者名/発表者名
      永井崇、今村哲也、上野学、鈴木都史郎、斎藤徹一、皆川倫範、道面尚久、小川典之、竹田裕、小川輝之、石塚修
    • 学会等名
      第106回日本泌尿器科学会総会
  • [学会発表] Impact of Dai-ken-chu-tou on urinary frequency induced by cold stress in rats. American Urological Associstion.2017

    • 著者名/発表者名
      斎藤徹一、皆川倫範、今村哲也、永井崇、小川輝之、石塚修
    • 学会等名
      American Urological Associstion. 2017/5/13, Boston USA
    • 国際学会

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公開日: 2018-12-17  

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