研究実績の概要 |
我々は、2012年以後、さまざまな下部尿路虚血モデルを作成し、検討を重ねてきた。大きくわけて、①ニコチン投与モデル、②冷えストレスモデル、③放射線性障害モデルの3つの病態モデルを開発した。 ①ニコチン投与モデル(急性、細動脈レベルの閉塞)ニコチン摂取は下部尿路症状の増悪因子のひとつとされ、交感神経系の機能亢進や平滑筋の神経成長因子産生増加、尿路上皮からのアデノシン三リン酸(ATP)分泌増加などをもたらすとされている。我々の検討では、ニコチンの腹腔内投与により、膀胱血流が低下することが確認された(図6)。タダラフィルで治療介入を行い、その血流の低下は抑制された。レーザードプラ血流測定されるため、細動脈レベルでの攣縮が虚血の機序と考えられる。(永井ほか、日本泌尿器科学会総会, 2018) ②冷えストレスモデル(急性、毛細血管レベルの閉塞)冷えと頻尿の関連は、経験的にも学術的にも明らかである。寒冷に暴露することにより、排尿筋活動が亢進する(図7)。冷えには様々なメカニズムが関与すると考えられているが、当教室では血流と寒冷受容体(TRP受容体)との関連に注目して研究を行っている。(皆川ほか、泌尿器科漢方医学研究会, 2018) ③放射線性障害モデル(慢性、毛細血管レベルの閉塞)放射線性膀胱炎のモデルを作成し、幹細胞による治療効果を明らかにした(図8)。放射線による血管内皮障害は顕著で、毛細血管レベルの慢性虚血障害である。(Imamura T, et al. Tissue Eng, 2018)
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