前年度は超遠心法にて回収した腎癌細胞由来エクソソームをMALDI-TOF/TOFとwestern blot法を用いて解析を行い、正常の近位尿細管細胞株(RPTEC)に比べて腎癌細胞株(Caki-1、KMRC-1、OS-RC-2)のエクソソーム内では3つのタンパクが増加(1.3倍以上)していることと12のタンパクが減少していること(0.8以下)を見出した。これらの結果をもとに健常人および腎癌患者から血清を採取して前年度の基礎検討で明らかになったターゲットについてエクソソーム内の発現をwestern blot法にて検討した。その結果、超遠心法や免疫沈降法で採取したエクソソームではターゲットタンパクの分子量がIgGや血清アルブミンに近い場合その発現の検討が困難であることが判明したため、本年度はさらに精製度が高いと考えられる密度勾配遠心法での解析を行った。しかし本方法においてもエクソソーム画分にIgGやアルブミンが混入し正確な評価が困難であった。以上から上記の方法をもって選定したターゲットの発現確認は困難であると考え、別のターゲットの発現検討を行ったところ一部の患者では血清から分離したエクソソームにおいて糖代謝関連膜タンパクの発現が確認できた。エクソソームタンパクの発現解析においてはその分子量によっては高度の精製が必要になり多検体の処理が困難であることが明らかになったため、核酸での発現を検討することとした。健常人および腎癌患者の血清から免疫反応を用いてエクソソームを回収しmiRNAの網羅的解析を行ったところ健常人と比較して腎癌患者で2倍以上の増加を認めたmiRNAが22個見出された。
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