研究課題
昨年度、報告したように,多能性を維持した高品質なカニクイザルES細胞を樹立し、このCell lineについては学術誌Stem cell researchにその成果を報告した。その後、その細胞を使用し、既報のヒト多能性肝細胞の腎分化プロトコルにそって分化誘導実験を行った。結果、分化誘導において、より系統だった分化を示すことがわかった一方、分化誘導に必要な制御因子の使用濃度、暴露期間はヒトとは大きく異なることがわかった。近年、遺伝成腎疾患の一つである常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)患由来のヒトiPS細胞を使い、Vitroで腎臓オルガノイドに分化させ、嚢胞の形成を確認したという論文が報告された。我々の樹立したカニクイザルES細胞のセルラインにさらに遺伝子改変を加えて、遺伝成腎疾患モデルとしてVitroで嚢胞形成を再現できるかを試みた。遺伝子改変については、ADPKDの責任遺伝子であるPKD1をターゲットとする方針とした。既に我々が着手していた、ADPKDモデルカニクイザルを作出する際に使用したCRISP /Cas9システムとガイドRNAを流用した。ヘテロノックアウトとホモノックアウトのセルラインを樹立し、分化実験を行ったが、ホモノックアウトの方は腎の分化がうまく誘導できなかった。これはホモノックアウトの場合、ほぼ全ての動物種において、腎臓には胎児期から嚢胞が多発し、腎不全による胎生致死を来すため、この結果がノックアウトによる結果なのか、分化そのものがうまく行っていないのかが判断できなかった。一方ヘテロノックアウトの細胞に関しては野生型と全く同じ挙動を示し、差を見出すことはできなかった。我々が現時点で作成している腎オルガノイドは、胎生期の腎を再現しているに止まっているため、ADPKDの病態を十分に再現できなかったと推測された。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件)
Stem Cell Research
巻: 37 ページ: -
10.1016/j.scr.2019.101439.
NATURE COMMUNICATIONS
巻: - ページ: -
10.1038/s41467-019-13398-6
Biology of Reproduction
巻: - ページ: 1440-1452
10.1093/biolre/ioz040