研究実績の概要 |
男性不妊症患者から得た精巣生検組織を用い、免疫組織学的染色にてアクチンキャッピングプロテインβ3の精子形成過程各段階の発現解析を行った。キャッピングプロテインβ3は主に精母細胞以降の細胞質に発現しており、精子細胞においては先体や鞭毛の形成とともに大きくタンパク局在が変化していた。成熟精子では精子頭部のpostacrosomal regionに局在を認めた。さらにキャッピングプロテインα3との二重免疫染色ではこれらのタンパク局在は完全に一致していた。 次にアクチンキャッピングプロテインの男性不妊症との関連を解析するため、妊孕性の確認された正常ボランティア(正常群、n=20)および乏精子症や精子無力症と診断された男性不妊症患者(不妊群、n=21)から得られた精液検体を用い、免疫組織学的染色にてキャッピングプロテインα3およびβ3の発現解析を行った。異常染色精子の割合は正常群、不妊群各々31.2±2.5%、52.4±3.0%(P<0.001)で、不妊群において有意に異常染色精子の割合が高かった。またキャッピングプロテインα3およびβ3の発現はいずれの検体においても概ね一致しており、両タンパクの発現は互いに補填しあっていることが推測された。異常染色割合と精液所見各パラメータとの相関分析では、精子濃度、総精子数、形態異常精子、運動率において有意に相関を認めた(ρ= -0.70, -0.58, 0.62, -0.46, P<0.01)。
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