本研究は、前立腺癌のエンザルタミドまたはドセタキセル感受性に関わる新規遺伝子を抽出することと、そのメカニズムを解明し、新規治療ターゲットの発見につなげることを目的としている。我々はまず、エンザルタミド感受性に関わる新規遺伝子の探索を試みたが 、実験の根本となる細胞株に対するエンザルタミドの最小致死濃度の設定がうまくいかなかったため、ドセタキセル感受性に関わる新規遺伝子の探索へと目標を転換した。ドセタキセルにおいては最小致死濃度の設定が完了したため、前立腺癌細胞株の各細胞に対し各 々1遺伝子をノックアウトすることができる実験系(交付申請書に記載)を用いて、遺伝子の機能抑制(ノックアウト)スクリーニン グを行った。具体的には、1細胞1遺伝子がノックアウトされた細胞集団にドセタキセルを投与し、ドセタキセル投与下に生存すること ができた細胞からいずれの遺伝子がノックアウトされていたかを次世代シーケンサーを用いて解析した。結果、抑制時に前立腺癌の進展を促す可能性があることが近年報告されたBACE2遺伝子や、膀胱癌で抗癌剤感受性に関わることが報告されたmir1182(miRNA)など の遺伝子が上位にランキングされ、遺伝子のスクリーニングとして機能している実験系であることが示唆された。その他にも、抗がん剤の感受性に関わる遺伝子として報告のない、興味深い候補遺伝子を抽出することができたため、これらの抽出しえた遺伝子の機能抑制を行った場合に前立腺癌細胞がドセタキセルに対して抵抗性を示すのかを検討を行った。しかし、候補遺伝子がノックアウトされた細胞とコントロール細胞の生存率を比較したところ、有意差を認めなかった。濃度条件を変更し、検討を行ったが同様の結果であったため、新規遺伝子の発見には至らなかった。
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