前回の報告に続き、術後の評価が可能であった症例において、原発巣摘除前後の末梢血液細胞におけるCXCL7の発現をPCR法にて比較した。検討した10例では全例で術後に発現低下を認め、病勢のモニタリングに有用である可能性が示唆された。 PAXgeneは血液中の全てのRNA(主に好中球,PBMC由来)を抽出している。そこで健常者,癌患者から好中球,PBMCを採取し,CXCL7の発現の局在を定量的PCR法にて比較した。 その結果CXCL7は主にPBMCに発現していることが明らかになった。 この結果から末梢血液細胞におけるCXCL7の発現変化はPBMCにおける発現変化を捉えていたと考えられた。そこでPBMCにおけるCXCL7の発現上昇が,腎癌の存在により引き起こされていることの検証として以下の実験を行った。まず腎癌細胞株Caki-2、786-OおよびコントロールとしてHEK293T細胞株を2日間培養し、健常者より採取したPBMCをトランスウェルインサートに播種し、共培養。18時間後にPBMCを回収しCXCL7の発現上昇が同様にみられるか定量的PCR法を用いて検証した。するとCaki-2および786-Oと共培養したPBMCにおいてコントロールのHEK293Tと共培養したPBMCと比較し、有意にCXCL7の発現が上昇していました。末梢血液細胞におけるCXCL7の発現変化はPBMCにおける発現変化を捉えていたと考えられた。腎癌細胞株と共培養した健常者由来のPBMCにおいて、CXCL7は有意に発現上昇していた。末梢血液細胞におけるCXCL7の発現は腎癌の診断・モニタリングの新規バイオマーカーになりうると考えられた。CXCL7は主にPBMCに発現しており、腎癌の存在により発現上昇することが示唆された。
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