研究課題
進行性膀胱癌の予後は不良であり、再発・転移症例に対する抗癌剤治療や放射線治療では十分な治療成績が得られていない。また、セカンドラインの治療法も確立されておらず、他の泌尿器癌(前立腺癌や腎癌)に比べて明らかに治療手段が少ない。進行性尿路上皮癌や治療抵抗尿路上皮癌の新規治療法の開発には、これら癌細胞で活性化している分子経路を明らかにして、その活性化経路を遮断する戦略が必要である。申請者らは、次世代シークエンサーを用いた「全ゲノム尿路上皮癌マイクロRNA発現プロファイル」を作成し、これまで明らかとなっていない「癌促進型マイクロRNA」「癌抑制型マイクロRNA」の探索に成功している。そして、本研究は、新規膀胱癌・癌抑制型マイクロRNAを起点とした膀胱癌の進展や転移に関わる分子ネットワークを探索し、その活性化経路の遮断する事により、膀胱癌の増殖や転移を抑制する事が可能であるか、検討するものである。今年度の研究成果として、マイクロRNA-223が膀胱癌組織で有意に発現が抑制されていることを解明した。このマイクロRNAを核酸導入するとアポトーシスを介した増殖能抑制のみならず、癌細胞の遊走・浸潤能も有意に抑制された。標的遺伝子探索ではマイクロRNA-223がWDR62を直接制御することが明らかとなった。TCGAによるRNA発現解析ではWDR62は膀胱癌組織において発現が上昇しており、また悪性度が高くなるにつれてWDR62の発現が亢進することが分かった。マイクロRNA-199 familyの低発現群は高発現群に比べ有意に予後不良であった。本研究成果を、現在、投稿中である。また、最近、進行性尿路上皮癌に対する標準治療に使われている、ジェムシタビンとシスプラチンのそれぞれの耐性株を樹立することに成功した。
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Br J Cancer
巻: 116 ページ: 1077-1087
10.1038/bjc.2017.43.