研究課題
本研究では前立腺癌の進展におけるNFATの働きを解明し、今後の去勢抵抗性前立腺がん治療に役立てるものである。本年度は、前立腺癌におけるNFATの各種isoformの発現を確認し、特にNFATc1が前立腺癌の進展であることを明らかにした。ヒト前立腺組織アレイ225症例を用いた免疫組織染色では,前立腺癌組織は正常組織に比べて有意にNFATc1の高発現を認めた.また,下記表にあるように,前がん病変であるHGPINは正常と前立腺組織の間の発現スコアであり,前立腺癌の発癌・進展に関与していることが確認された.ヒト前立腺癌組織アレイにおいて,前立腺全摘除術後のPSA再発とNFATc1高発現の相関を確認した.NFATc1の発現のある群ではない群と比べて有意にPSA再発の低下を認めた.前立腺癌組織アレイにおけるNFATc1の発現と予後因子を多変量解析で検討した.NFATc1は有意に独立した予後因子であった.マトリジェルを用いた細胞浸潤能について検討を行った.NFATc1をノックダウンすると,細胞浸潤能は有意に低下した.また,免疫抑制剤を用いても,細胞浸潤能は有意に低下した.また細胞浸潤能に関してPCR法でMMP2およびMMP9の発現を検討したところ,免疫抑制剤で有意にMMP2およびMMP9の発現低下を認めた.ゼラチンザイモグラフィーをもちいても同様にMMP2およびMMP9の活性低下を認めた.一方で,NATc1をノックダウンした細胞では,免疫抑制剤による細胞浸潤能の低下は確認できなかった.これらのことより,免疫抑制剤はNATc1を介した細胞浸潤能の低下を認めた.NFATは免疫抑制剤の治療標的であるため、発現していることで、今後免疫抑制剤における前立腺癌治療の可能性を示唆するものであった。
2: おおむね順調に進展している
1.前立腺全摘後の再発率はNFATc1発現群で有意に高かった(p<0.001)。2.前立腺細胞株において、免疫抑制剤がNFATc1の発現・活性を低下させた。また、免疫抑制剤の刺激により細胞増殖能・創傷癒合能・細胞浸潤能の低下やMMP-2・MMP-9の活性の低下を認めた。これらの結果は、NFATc1-shRNAを強制発現させた細胞株では認められなかった。3.マウス移植片腫瘍モデルにおいて、免疫抑制剤使用群では有意に腫瘍の増殖抑制を認めた。
本研究は前立腺癌の進展におけるNFATc1の関与を明らかにした。今後、前立腺に限らず膀胱癌においてもNFATの各種isoformの発現が確認されており、基礎実験を含めて尿路上皮癌においても研究を進めていく方向である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 3件)
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