研究実績の概要 |
本研究ではCsAおよびFK506はNFATc1を抑制し,膀胱癌細胞においてCOX-2を抑制していた.一方で,前立腺癌細胞においては,COX-2での変化は見られなかった.詳細なメカニズムは不明だが,癌種やその他の因子が,NFATc1の下流因子に影響している可能性がある.またNFATのc2-5までの他のパスウェイが影響している可能性も考えられる.本研究では,細かな検討はできなかったが,少なくとも膀胱癌においてはNFATc1の発現が多く見られ,NFATc1とCOX-2を介した抗腫瘍効果のパスウェイが動いていると考えられた.
本研究において,膀胱癌において免疫抑制剤であるCsAおよびFK506がNFATc1-COX-2の経路で抗腫瘍効果を示すことが分かった.そして,NFATc1の活性化が膀胱癌の進展に関与していると考えられた.NFATc1は核内移行により活性化する転写因子で,核内に移行するとAP1,MEF2,GATA,およびHDACなどとヘテロダイマーを作り下流因子へと転写されていく(Macian, 2005) (Mancini and Toker, 2009).大腸癌の細胞株であるCaco-2,HT116,およびHT29においてNFATc1の下流遺伝子はc-MYCと考えられている.本研究でも前立腺癌においてはNFATc1-c-MYCによるパスウェイを認めており,また悪性黒色腫ではNFATc1の下流遺伝子はCOX-2と報告されている.これらのことから癌種による違いがあると考えられる.
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