研究実績の概要 |
昨年までの実験で、In vitro, vivoにおいて、シュウ酸カルシウム(CaOx)がオートファジーを誘導し、その低下が、腎結石形成を促進することを見出した。本年では傷害を受けたオルガネラをターゲットにオートファジーが選択的に誘導されるかを検討し、さらに、オートファジーの上流制御因子であるmTORC1と、リソソーム活性を促進させる転写因子TFEBに着目し、オートファジー低下のしくみを調べた。 方法としてIn vitro研究では、マウス由来腎尿細管細胞に対してCaOx結晶を添加後、オートファジーの選択性の検討として、ミトコンドリア(TOMM20, Mitotracker)、リソソーム(LAMP1, GAL3, Lysotracker)とポリユビキチンタンパク(FK2)、リン酸化p62の2重免疫染色を、さらに、PINK1とPARK2/Parkin、KEAP1とNRF2のWestern blotを行った。mTORC1の活性は、下流の標的因子であるリン酸化S6キナーゼのWestern blotを行った。また、経時的に核内タンパクを抽出しTFEBのWestern-blotを、さらにGFPでタグをしたTFEBを細胞にトランスフェクションし、核内シグナルを検討した。In vivo研究ではマウスにグリオキシル酸を投与し、腎でFK2, Gal3, リン酸化p62の免疫染色でオートファジーの検討を、さらに、リン酸化S6とTFEBの発現を免疫染色とWestern blotで調べた。 結果として、In vitro, vivo研究とも、CaOx結晶添加、またはGOX投与によりオルガネラが傷害され、それらをターゲットにオートファジーが選択的に誘導された。さらにその過程において、S6キナーゼの発現が亢進すること、また、TFEBの核内移行が阻害されることにより、オートファジーが抑制されることがわかった。
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