研究課題
BCG 膀胱注入療法 (BCG 膀注) は筋層非浸潤性膀胱癌,特に膀胱上皮内癌に対する標準治療として実施されているが,再発・進展を来たす症例は少なくない。本研究では BCG 抵抗性に関連する局所微小環境中免疫細胞を模索し,さらに非侵襲的な尿からの関連免疫細胞の同定を試みた。BCG 膀注が宿主免疫を賦活する Biological Response Modifier 療法であることから,まずは治療成績に関わる腫瘍周囲免疫微小環境について免疫細胞マーカーを用いた組織染色で検討した。治療前の腫瘍組織切片に制御性 T 細胞および 腫瘍関連マクロファージが多いと再発率・進展率が高かったことから,これら 2 つの免疫細胞がBCG 誘導免疫に対する癌細胞の免疫寛容性に関与していることが示唆された。BBN 誘導同所性膀胱癌マウスモデルを用いた研究では,マイトマイシン C やアンスラサイクリンの膀注により膀胱腫瘍周囲の制御性 T 細胞および腫瘍関連マクロファージいずれも減少した。これらの結果から,BCG 膀注前の抗癌剤膀注併用は,腫瘍免疫環境の調整を介し,後の BCG 膀注の治療効果の向上につながると推察される。BCG 治療抵抗性癌に対して多くの新規薬剤が開発中である一方,現時点でも使用可能な抗癌剤の間接作用に糸口を見出す新たな治療戦略に期待したい。今後,併用療法の効果的なレジメン設定や症例選択基準の確立を見据えた臨床試験が急務であろう。また,BCG 膀注実施中の患者の尿検体内免疫細胞の経時的変化を解析すると,B 細胞系リンパ球マーカーはほとんど変化せず,制御性 T 細胞マーカー FOXP3 をはじめとした多くの T 細胞系リンパ球表面抗原の発現上昇をとらえることができた。これらの変化が顕著であるほど,再発率が低い傾向を示し,今後の臨床応用が期待された。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
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