研究課題/領域番号 |
16K20161
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
江崎 太佑 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (50598422)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 前立腺癌 / 去勢抵抗性前立腺癌(CRPC) / CDK4 / アンドロゲン・アンドロゲンレセプター軸 |
研究実績の概要 |
近年、去勢抵抗性前立腺癌(castration-resistant prostate cancer : CRPC) の遺伝子解析から、アンドロゲン・アンドロゲンレセプター軸(AR axis)以外の遺伝子にも変異が認められることが報告され、CRPC治療の新たなtargetとなりうるのではないかと期待されている。その中で当教室では、細胞周期調節因子であるCDK4に着目して予備的検討を行ったところ、DEK4阻害剤はCRPC株に対して強い抗腫瘍効果を持つことが示唆された。今回、CDK4阻害剤を中心とする新規治療戦略の確立を試み、さらにアンドロゲン除去環境がAR axis以外のpathwayに与える影響を明らかにし、CRPC進展プロセスの一端を解明すること目的としている。 CDK4阻害剤はAR axisとは独立したpathwayに作用する抗腫瘍のメカニズムを有すると予想される。たとえば膀胱癌においては、CDK4阻害剤において、Rbのリン酸化が抑制されるのみでなく、RbとpRbの総量自体も減少していることが分かっている(Sathe et al, J Urol, 2015)。そこで今回は、各種前立腺癌細胞株における、CDK4阻害剤投与前後でのRbをはじめとする細胞周期調節因子の変化を解析し、CDK4阻害剤がCRPCにもたらす抗腫瘍効果を解明していきたい。その過程で、アンドロゲン除去環境で進展していった前立腺癌細胞にAR axisと独立してどのような変化が生じたのかが明らかになり、アンドロゲン除去環境が前立腺癌に与えた影響・進展プロセスの一端も明らかになると見込んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当教室においてアンドロゲン除去下での長期間培養により樹立されたCRPC細胞株モデル:LNKO6と、同じくアンドロゲン除去下で樹立されたドセタキセル抵抗性ヒトCRPC株:CA-2AT6の2種類のCRPC株を含む、各種前立腺癌細胞株(LNCaP・LNKO6・CA-2AT6)において、CDK4阻害剤について抗腫瘍効果を検討した。LNCaP・LNKO6・C4-2AT6は、同様にPTEN欠損・AR増幅・PSA産生の形質を備えつつ、それぞれホルモン感受性・去勢抵抗性・去勢抵抗性ドセタキセル抵抗性と異なった特徴を有する。この特徴は臨床における前立腺癌の進展プロセスと類似しており、この実験系を用いることで進展プロセスに着目したCRPCに対する新規治療戦略の構築を可能とする。検討の結果、CDK4阻害剤はホルモン感受性株よりもむしろ、ドセタキセル抵抗性を有するような進行したCRPC株に対して強い抗腫瘍効果を持つことが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
各種前立腺癌細胞株LNCaP・LNKO6・C4-2AT6におけるCDK4阻害剤を使用した際の、AR axis外のpathwayにおけるシグナル伝達の評価を行いたい。これは、western blot法を用いて各pathwayのタンパクの発現を確認することで行う。さらに、CDK4阻害剤使用下、およびCDK4阻害剤とCYP17 阻害剤・第2世代抗アンドロゲン剤・アンドロゲン併用下での、AR axisおよびその他のpathwayの検討へと発展させる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画よりも物品購入額が抑えられた。また、学会参加が少なく、旅費が抑えられた。
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次年度使用額の使用計画 |
余剰となった予算で、追加の物品購入を行う予定である。
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