近年、遺伝子解析にて去勢抵抗性前立腺癌(castration-resistant prostate cancer : CRPC) ではアンドロゲン・アンドロゲンレセプター軸(AR axis)以外の遺伝子にも変異が認められることが報告され、CRPC治療の新たなtargetとなりうるのではないかと期待されている。本研究は細胞周期調節因子であるCDK4に着目し、CDK4阻害剤を中心とする去勢抵抗性前立腺癌の新規治療戦略の確立を試み、さらにはアンドロゲン除去環境がAR axis以外のpathwayに与える影響を明らかにしてCRPC進展プロセスの一端を解明することを目的とした。 当教室で有するLNCaP・LNKO6・C4-2AT6は、同様にPTEN欠損・AR増幅・PSA産生の形質を備えつつ、それぞれホルモン感受性・去勢抵抗性・去勢抵抗性ドセタキセル抵抗性と異なった特徴を持った前立腺癌細胞株であるが、これは臨床における前立腺癌の進展プロセスと類似している。これらの細胞株を用いて検討を行った。その結果、CDK4阻害剤による抗腫瘍効果はその細胞株のホルモン感受性やドセタキセル抵抗性に関係なく発揮されることが分かった。さらにFACSやwestern blottingによってCDK4阻害剤投与下でもAR発現が抑制されないことが明らかにし、CRPC進展プロセスの過程でAR axisとは別のpathwayに変化が生じ、CDK4阻害剤への感受性が維持されている可能性を示した。mRNAのマイクロアレイ解析にて、CDK4阻害剤投与下では、前述のいずれの細胞株でも細胞周期調節にかかわる因子の発現が変化していることを示した。
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