昨年度の研究に引き続き、ヒト腹直筋から分離・精製した骨格筋由来幹細胞のパラクライン効果について検討した。ヒト骨格筋由来幹細胞は、各種のサイトカインを分泌することで、既に報告したレシピエント由来の血管新生のみならず神経、骨格筋系細胞の再生を促進していることが推測された。 また、ヒト骨格筋由来幹細胞のうち、血管・神経への分化能を有するSk-34細胞を使用し、神経の再生について検討した。マウスの坐骨神経を約7mm切除したモデルを作成し、神経欠損部にSk-34細胞を充填したtubeを移植することで、神経系細胞の再生と運動能力の回復を証明した。今回の結果は、今後尿失禁や勃起障害に対する勃起神経の再生等にも応用できる可能性があると思われる。 臨床応用を目指した大型動物での研究については、外部機関と供給を含めた共同研究を締結し、本学の生命科学統合支援センターにおいて飼育を既に開始している。ミニブタの骨格筋を採取し、ミニブタにおける骨格筋幹細胞の抽出と精製法の検討を行い、その方法についてはほぼ確立した。また、ミニブタにおける尿道への幹細胞移植法と機能評価法を検討するための実験を重ねている。 本研究は臨床応用前段階に到達していると考える。次年度以降は、引き続き大型実験動物における効果と安全性の確認を行うとともに、PMDA薬事相談等をはじめとした事務的手続きについても並行して行い、数年以内の治験開始を目標とする。
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