研究課題/領域番号 |
16K20170
|
研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
白澤 弘光 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60598019)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 体外成熟培養 / 卵子凍結 / 単為発生 / 胚盤胞 / 栄養外胚葉 / 内部細胞塊 |
研究実績の概要 |
本年度は子宮体癌5症例の摘出卵巣より計55個のヒト未成熟卵子を回収して研究に供した。患者平均年齢は35.8歳であり、体外成熟培養により56.0%が第1極体を放出し、第2減数分裂期(MII期)に至った。当科は2014年より計19症例(患者平均年齢39.0歳)の子宮体癌患者から同様に未成熟卵子を回収しており、これまでの体外成熟培養による成熟率は52.5%であり、本年度の体外成熟培養の成績はほぼ同程度であった。 本年度はMII期まで成熟した成熟卵28個に対し単為発生刺激(parthenogenetic activation:PA)を行い、その後の卵割過程をタイムラプスにより詳細に観察し、卵割を認めた卵に対しては栄養外胚葉、内部細胞塊のマーカーであるCdx-2, Oct-4の染色も施行し評価した。またヒト卵子の加齢性変化を検討する上で、ヒト卵子を研究目的に用いることは必須であるが、ヒト卵子を確保する際に大きなハードルがある。我々は2014年より継続して摘出卵巣から卵子を回収する手法を確立し、本年度はタイムラプスによる評価で患者年齢、第一極体放出時間の差異によるPA後の卵割過程および蛍光免疫染色による卵の質評価を行った。これらの知見は貴重なヒト卵子を用いて各年齢層の比較による加齢性変化(卵子老化)を検討する上で重要な知見となる。また、体外成熟培養後の第1極体放出時間の差異によるその後の卵割過程の比較検討は、妊孕性温存の際などにおける卵子凍結のタイミングを測る際にも重要な知見になると考える。 これらの知見をもとに卵子凍結の安全性について、蛍光免疫染色などによる卵内部の蛋白発現を加齢性変化の影響を加味して検討を現在行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究方針自体は概ね順調に推移している。 摘出卵巣からの卵子回収、体外成熟培養の過程は我々の既報を含めた過去の報告とほぼ同様の成績となっている。これらの体外成熟培養過程もタイムラプスにより評価を行っており、卵子凍結のタイミングを含めた評価を行っている。 本年度は体外成熟培養、単為発生プロセスを連続してタイムラプスにより評価し、動的解析および蛍光免疫染色による蛋白発現過程の評価も行いデータの蓄積をしている。 単為発生プロセスもカルシウムイオノファおよび6-DMAPによる単為発生刺激を用いて卵割率は39.3%となっており、非刺激下摘出卵巣由来の、未成熟卵子に対する体外成熟培養後の単為発生過程であることを考慮し、既報との比較検討を行っている。しかし、morula以上への到達率は単為発生を試みた成熟卵に対し7.1%と低率であり、卵子の質を評価する上で更に単為発生の効率を向上させるか、症例数を更に積み重ねて評価していく必要がある。 年間10症例程度の子宮体癌症例の蓄積を目指しているが、本年度は協力施設における手術症例がなく卵子輸送の機会がなかったため、総症例数が5症例にとどまり55個の卵子回収となった。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はこれまでの卵子回収、体外成熟培養、単為発生プロセスをタイムラプスを用いて評価し、卵子の質的評価については動的解析のほか、当施設保有の次世代シーケンサも用いた異数性の評価も含めた検討を予定している。これらにより、卵子の凍結・解凍過程における質的変化を更に詳細に検討していく予定である。 平成29年度は症例数が5症例であったが、今後も協力施設と連携して症例の確保に努める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
協力施設からの卵子輸送に要する交通費、試薬準備費用として予算を計上していたが、協力施設において今年度手術症例がなかったため助成金の残額が生じた。次年度も同様に協力施設に手術症例がある際には卵子輸送を複数回行うため、当該助成金は次年度にも使用する予定である。
|