好中球が子宮内膜症発症にどのように寄与するかを好中球除去抗体を用いたマウス子宮内膜症モデルを作成して検討した。同実験は、東京大学動物実験実施規則に則り行い、動物実験専門委員会の承認の下行った。好中球除去抗体として、抗Gr-1抗体(クローン名RB6-8C5)を用いた。培養、精製した抗体溶液の効果は予備実験において確認した。100μgの腹腔内単回投与で投与後24時間後及び48時間後の末梢血液中の好中球除去が確認された。 好中球除去が病巣形成局所において確認出来るか対照群と好中球除去群を5匹ずつ作成して、子宮投与2日目の子宮内膜症組織を採取し確認した。好中球のマーカーであるNIMP-R14にて免疫組織化学染色した。対照群で認める好中球浸潤は好中球除去群では殆ど観察されなかった。 マウス子宮内膜症モデルは、8週齢BALB/c雌マウス126匹を用いた。麻酔下に卵巣摘出後、エストロゲンを毎週補充した。2週間後、126匹のうち42匹のドナーマウスを安楽死させ、子宮を細切し、84匹のレシピエントマウスの腹腔内に投与した。レシピエントマウスは14日目に安楽死させ、腹腔洗浄液を回収し、腹腔内の子宮内膜症病巣を採取、重量測定した。レシピエントは、好中球除去抗体の投与法にて3群に分けた。すなわち、子宮片投与前1日から投与後3日目まで5日間投与する早期除去群(E群)と、子宮片投与後8日から12日まで投与する晩期除去群(L群)と、PBSを投与する対照群(C群)の3群に分けて検討した。E群では他群に比べて、個数、総重量の減少を認めた。一方、病変1個当たりの重量は、早期除去群と対照群は有意差を認めなかった。これらの結果より、好中球が子宮内膜症の初期における機能を有していることが分かった。
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