研究課題/領域番号 |
16K20181
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
山本 真 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 助教 (70719054)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | FDG-PET / テクスチャ解析 / 子宮肉腫 |
研究実績の概要 |
現在、システム生物学の中心はgenomics、proteomicsだが、新たな分子イメージング法を用いたRadiomics解析法の登場で、細胞や時間で推移する複雑な生命現象をよりダイナミックに理解できる可能性がある。Radiomics解析法の一つであるテクスチャ解析とは、粗い、滑らかといった一般的な質感などの情報を数量化する試みで、従来は人工衛星からのリモートセンシングなどに用いられている。 子宮肉腫は非常に稀な予後不良の疾患であり、外科的に摘出しても高率に肺転移を生じる。効果的な治療法開発のため新たな予後予測のツールが必要不可欠である。我々は、Radiomics解析法の一つであるテクスチャ解析を用い、3つのステップに分けて子宮肉腫の新たな予後予測バイオマーカー開発を目指している。1)臨床検体での子宮肉腫テクスチャ解析と予後予測に有用な特徴量をピックアップする。2)テクスチャ特徴量が何に起因するものかを動物モデルで検証する。3)新規予後予測バイオマーカーを樹立する。 本年度は臨床献体でのテクスチャ解析において、子宮筋腫と子宮肉腫の鑑別能と子宮肉腫の予後予測に有用かを調べた。子宮肉腫と子宮筋腫の鑑別においては、一次特徴量であるSUVmaxだけでなく、二次特徴量であるnormalized grey-level co-occurrence matrix (NGLCM)から計算したentropyやcorrelationといった特徴量が良好な鑑別能を示すことがわかった。また、予後予測に関しては、子宮肉腫症例に対しテクスチャ解析を行いKaplan-Meier曲線による単変量解析を行った。 entropy、SUVmax、SUV kurtosis高値及びhomogeneity低値と予後不良が関係している可能性が示唆された。今後は、論文作成と共に動物モデルでの検討を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々はRadiomics解析法の一つであるテクスチャ解析を用いた宮肉腫の新たな予後予測バイオマーカー開発を目指している。1つ目のステップである1)臨床検体での子宮肉腫テクスチャ解析と予後予測に有用な特徴量をピックアップを事前の想定通りに行うことができ、予後予測に有用と思われるいくつかの特徴量を見いだすことができた。子宮肉腫と子宮筋腫の鑑別においては、一次特徴量であるSUVmaxだけでなく、二次特徴量であるNGLCMから計算したentropyやcorrelationといった特徴量が良好な鑑別能を示した。予後予測に関しては、Kaplan-Meier曲線による単変量解析でentropy、SUVmax、SUV kurtosis高値及びhomogeneity低値と予後不良が関係している可能性が示唆された。 今後は、子宮肉腫肺転移モデルマウスを用いた検討を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
28年度に臨床検体を用いた検討に関しては、追試及び論文作成を進めていく。また、子宮肉腫肺転移モデルマウスを用いた動物実験を行っていく。 ・予後良好株と予後不良株の亜株作成 子宮肉腫肺転移モデルマウスの中で、やせで腫瘍径の大きい予後不良の個体と比較的予後が良好な個体から腫瘍片を摘出し、別個体への同所移植で継代することにより予後良好株と予後不良株の亜株を作成する。 ・animal PETでのテクスチャ解析 子宮肉腫肺転移モデルマウスの亜株を樹立した後に、それぞれをanimal PETでテクスチャ解析を行い、動物実験モデルと臨床検体で同様の結果になるかを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
28年度は、主に過去の臨床検体を用いたテクスチャ解析を中心に行ったため、動物実験に用いるヌードマウスやFDG-PETトレーサーといった試薬類を使用しなかった。そのため、次年度使用額が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度分と合わせて、主に動物実験にかかるヌードマウス、試薬類や論文投稿、学会発表等にかかる費用に用いる予定である。
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