現在、システム生物学の中心はgenomics、proteomicsだが、新たな分子イメージング法を用いたRadiomics解析法の登場で、細胞や時間で推移する複雑な生命現象をよりダイナミックに理解できる可能性がある。Radiomics解析法の一つであるテクスチャ解析とは、粗い、滑らかといった一般的な質感などの情報を数量化する試みで、従来は人工衛星からのリモートセンシングなどに用いられている。子宮肉腫は非常に稀な予後不良の疾患であり、外科的に摘出しても高率に肺転移を生じる。効果的な治療法開発のため新たな予後予測のツールが必要不可欠である。我々は、Radiomics解析法の一つであるテクスチャ解析を用い、3つのステップに分けて子宮肉腫の新たな予後予測バイオマーカー開発を目指している。1)臨床検体での子宮肉腫テクスチャ解析と予後予測に有用な特徴量をピックアップする。2)テクスチャ特徴量が何に起因するものかを動物モデルで検証する。3)新規予後予測バイオマーカーを樹立する。 29年度は28年度に得られた臨床献体でのテクスチャ解析結果から子宮肉腫と子宮筋腫の鑑別に従来から用いられている一次特徴量であるSUVmaxだけでなく、二次特徴量でも良好な鑑別能を示していることを論文投稿で報告した。また、動物モデルに使用する子宮肉腫の細胞株の基礎的な解析を行った。30年度は子宮肉腫の細胞株をヌードマウスに移植し解析を行う予定であったが、子宮肉腫細胞株での実験が予定通り進まず、cell lineの数も限られていることから、他の癌種で検討を行うこととし、次年度まで研究を継続することとした。令和元年度は複数の卵巣がん細胞株を培養し、卵巣がんの播種性転移に関わるVEGFの発現をぞれぞれの細胞株で確認し、ヌードマウスへの移植実験を行うための基礎的な解析を行った。
|