研究課題
MIG6はプロゲステロン受容体(PR)の下流因子と考えられる。ほぼ全ての子宮内膜癌(EC)細胞株はPR発現が減弱もしくは欠失しているが、これにはヒストン脱アセチル化などのepigeneticな調節機構がかかわっている。そこでヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)Panobinostat(LBH589)を投与すると、EC細胞株Ishikawa、HEC1B、AN3CAのいずれもPR、MIG6発現の増強を認め、メドロキシプロゲステロン酢酸(MPA)100nMとLBH589 10nM併用により相乗的に細胞増殖抑制とアポトーシス誘導効果を示した。さらにPR陰性株HEC1Bのマウス異種移植腫瘍に対しても、MPA単剤、LBH589単剤、MPA+LBH589併用で比較すると、MPA単独で約25%、LBH589単剤で約30%、両剤の併用で約75%の腫瘍増殖抑制効果が観察され、in vivoにおいても相乗的な腫瘍増殖抑制効果を認めた。また、我々は子宮内膜特異的に遺伝子Aのknock-out(KO)を誘導できる遺伝子改変マウス(A-)を保持するに至った。A-マウスでは、KOの4週間後には全例で異型子宮内膜増殖症を発生し、8週後にはECを発症することを確認した。このマウスに遺伝子AのKO 4週間後よりcontrol、MPA、LBH589、MPA+LBH589 の4群で8週間治療を行い、治療群で腫瘍抑制効果を認めた。さらに遺伝子Aと遺伝子BのKOを同時に誘導できる遺伝子改変マウス(A-B-)では、KOの2週後にはECの発生を認め、PRの発現も低下するが、同A-B-マウスに対するMPAとLBH589の治療効果も検討している。
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信州医学雑誌
巻: 67 ページ: 63-70