研究課題/領域番号 |
16K20184
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
古田 直美 浜松医科大学, 医学部附属病院, 診療助教 (80647595)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 胎盤 / 絨毛炎 / 免疫組織染色 |
研究実績の概要 |
Villitis of unknown etyologyは保体由来のリンパ球を主体とした絨毛炎である。その免疫学的な背景は必ずしも十分に解明されていない。とりわけVUEの病変が広範囲な場合(diffuse type)には胎児発育不全(FGR)、胎児機能不全(NRFS)、胎児死亡(IUFD)に至る場合もあり、当院で経験したVUEについて免疫組織染色を行い、細胞性免疫の経路について解析を試みた。1) 研究対象の抽出2010年から2016年6月までの当院分娩症例において胎盤病理検査に提出された1,222個の胎盤の中から胎盤組織学的所見にて絨毛炎の存在した症例を抽出。臨床的背景から感染による絨毛炎を除外し、正常症例との比較を行った HE染色による、一般的な胎盤病理の検索 HE染色で一般的な胎盤病理所見“Atherosis”、“Immature terminal villi”、“Multiple branched terminal villi”、および“Thrombus”についての有無の検討を行った。diffuse type症例10例についてCD3・CD8・HLA-DR・細胞性免疫経路であるTh1細胞転写因子のT-bet ・Th1細胞に特異的なケモカイン受容体のCXCR3に対する免疫組織染色を行い、染色の有無・発現範囲・児の予後等臨床像との相関について比較検討した。Diffuse VUEにおいて病変の絨毛ではHLA-DR陽性であった。Diffuse VUEのリンパ球はT-bet、CD8、CXCR3陽性であった。いずれの染色性においても臨床像との相関は明らかでは無かった。Diffuse type VUEにおいて細胞性免疫経路(Th1経路)の活性化が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね計画に沿っているが正常症例の検討はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
1) 亜鉛コプロポルフィリン免疫染色による検討 平成28年度に抽出する予定であるVUEの症例100例と妊娠週数を合わせた非VUEのコントロール症例100例の胎盤について、亜鉛コプロポルフィリン免疫染色を行い、羊水混濁の重症度に関してステージ分類を行う。そして、脱落膜を中央に含む730μm四方(0.53 mm2)の任意のデジタル画面を1切片あたり5画面(胎盤あたり4切片x5画面=20画面)について、胎便を貪食したMφ数をカウントして、胎盤あたりの脱落Mφ数として評価し、VUE群と非VUE群で比較検討する。2) 胎便を貪食した脱落膜Mφの抗原提作用の評価 マクロファージが抗原提示機能を果たすときには、major histocompatibility complex (MHC)クラスⅡ分子と抗原を結合させて細胞表面に表出させる特色がある。そこで、VUE発症群で胎便を貪食したMφに対してMHCクラスⅡ分子に対する免疫染色による評価を行い、抗原提示性をVUE非発症群と比較検討する。 3) VUE 発症群において、脱落膜Mφの数ならびに抗原提作用の評価と児の予後との関連の評価 脱落膜における胎便を貪食したMφの数ならびにMHCクラスⅡ分子の免疫染色性と、胎盤重量、胎盤計測値、出生体重、出生の身長、BMI、PI、アプガースコア、臍帯動脈血pH、一ヶ月検診時点での体重、身長、BMI、PIなど児の予後のパラメーターと相関するか否かを解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬使用量が減ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
計画進行に支障はないので引き続き計画を進めていく。
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