研究課題
近年、メタボリックシンドロームの発症リスクにおいて小胞体ストレスの関与が注目されている。肥満において、過食などの栄養シグナルの変化により小胞体ストレスが亢進し、細胞内に折りたたみ不良タンパクが蓄積することが脂肪細胞の機能不全を来たし、脂肪組織に慢性炎症を惹起する可能性が注目されている。U.Ozcanらは、小胞体ストレスを緩和する分子シャペロンとして二次胆汁酸であるTauroursodeoxycolic acid(TUDCA)を重度の肥満を表現型とするob/obマウスに投与することにより肥満・耐糖能を有意に改善したと報告している。2016年日本産科婦人科学会学術集会にて、脂肪組織のマクロファージにおける小胞体ストレス応答亢進によりメタボリックシンドロームの悪化を招く可能性について発表し、優秀演題賞を受賞した。また、我々の研究グループでは、胎生期低栄養マウスモデルを用いて、胎生期の低栄養に起因する肝脂肪変性において、小胞体ストレス応答が亢進していることを見出だし、TUDCAの経口投与により劇的に改善することを報告した(Sci Rep 5,16867,2015,他)。マウス肝臓組織由来のRNAを用いてマイクロアレイによる網羅的な遺伝子解析を行い、胎生期の低栄養により遺伝子発現が増加し、TUDCAの投与によって変化が正常化した9種類の遺伝子群の中から、脂肪滴のサイズを増加させて脂肪蓄積を促すCell Death-Inducing DNA Fragmentation Factor-Like Effectors A (Cidea) and C (Cidec)を同定し、報告した。(Sci Rep,2019;9:17100)。胎生期の低栄養環境がCidea および Cidecの遺伝子発現をプログラムする機序をさらに解析することで胎生期低栄養に由来する肝脂肪変性発症リスクの低減を目指す。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件)
Scientific Reports
巻: 9 ページ: 17100 |
doi.org/10.1038/s41598-019-52943-7