研究課題/領域番号 |
16K20187
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
天野 創 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (20613467)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 酸化鉄ナノ粒子 / 光線力学療法 / ドラッグデリバリーシステム / 卵巣癌 |
研究実績の概要 |
超常磁性酸化鉄(superparamagnetic iron oxide nanoparticles:SPION)をpolyglycerol(PG)にて被包しoctalysineを介して光感受性物質であるクロリンe6(Ce6)を結合させたナノ粒子SPION-PG-Lys8/Ce6を用いて効率的な癌細胞に対する光線力学療法を実現すべく研究を続けてきた。その結果in vitroの実験で光感受性物質であるce6がナノ粒子に担持されることによりより効率的に癌細胞内特にミトコンドリア内へ担送されることが確認された。さらにナノ粒子にて効率的にクロリンe6を取り込ませた癌細胞に光線照射を行うことによってfree formのクロリンe6と比較してより強い殺癌細胞効果があることもWST-8assayを用いた細胞実験にて明らかになった。このように超常磁性酸化鉄ナノ粒子を利用した光感受性物質の細胞内への運搬によって、効果的な癌細胞に対する光線力学療法の治療効果が確認されたのでその結果をJournal of Materials Chemistry B誌(impact factor 4.872)に共著者として報告した。これらの結果を踏まえた上で現在ヌードマウスに癌細胞株を皮下移植したxenograft modelを用いてこのナノ粒子による光線力学療法の効果をin vivoで研究しているところである。このin vivoの実験で良好な結果が得られた後には論文化する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
in vitroの実験では良好な結果が得られたが、ヌードマウスを用いたin vivoの実験においては酸化鉄ナノ粒子に担持される光感受性物質Ce6の量が最低でも500μg/mL程度の濃度必要であると考えられるが、現在のところ200μg/mL程度までのサンプルしか作製することができていない。このように酸化鉄ナノ粒子に担持されるCe6の量が十分でないため酸化鉄ナノ粒子自体の改善が必要になっているためやや計画より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
より多くの光感受性物質をナノ粒子に担持させるため様々な手法を検討している。具体的には酸化鉄のサイズを変えた(in vitroの実験で用いた酸化鉄のサイズは8nm程度であったがそのサイズを大きくする手法を確立しており20nm程度までサイズを大きくすることが可能である)酸化鉄ナノ粒子の作製や、酸化鉄自体をナノダイヤモンドやグラフェンなどに置き換えたナノ粒子の作製、さらには担持させる光感受性物質のce6からverteporfinへの変更などを行っている。現時点ではナノダイヤモンドとverteporfinを用いたナノ粒子ND-PG-verteporfinにおいてverteporfin濃度が700μg/mLとin vivoでも十分な量担持させることに成功しておりin vivoの実験を再開しているところである。
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