光感受性物質であるクロリンe6を効率的に癌細胞内へ送達させるために、酸化鉄核、ポリグリセロールコーティング、およびオクタリジン機能性(SPION-PG-Lys8)からなるナノキャリア(SPION-PG-Lys8/Ce6)を設計した。細胞実験は卵巣癌細胞株、子宮頸癌細胞株を用いておこなた。SPION-PG-Lys8/Ce6は暗所では低い細胞毒性を示し、癌細胞内ではミトコンドリア内に集積した。SPION-PG-Lys8/Ce6を取り込ませた癌細胞に光線を照射することで癌細胞を死滅させることに成功した。さらにSPION-PG-Lys8/Ce6を取り込んだ癌細胞は修飾されていないSPIONを取り込んだ細胞に比べてオートファジーが抑制されることを明らかにした。これらの結果からSPION-PG-Lys8は癌に対する光線力学療法におけるクロリンe6の効率的なキャリアになり得ることが明らかとなった。現在これらの細胞実験をもとにxenograft modelマウスを用いたin vivoの実験を継続して行っている。なおin vitroの研究成果はJournal of Materials Chemistry B誌に報告した。 さらに癌に対する光線力学療法や化学療法、放射線療法の効果に、癌細胞の活性酸素腫の代謝能力が大きく関わっていることに注目し、そのメカニズム解明のため実験を進めた。先行研究として、癌細胞のミトコンドリアにおける活性酸素代謝に関わる酵素、mitochondrial superixide desmutase(SOD2)の発現と卵巣癌の予後に関するコホート研究を行った。SOD2の高発現はある特定の卵巣癌においては予後不良因子となることが明らかとなり、その成果を現在論文にまとめcancer biomarker誌に投稿中である。
|