研究実績の概要 |
先行研究をもとに、SPACA1は卵活性化因子(SOAF)の役割を担う可能性があると推察し、(1)ヒト精子SPACA1の卵活性化に影響を及ぼす分子(PLCζ)との関連性に関する研究を行った。免疫染色(IIF)で分子の局在を確認したところSPACA1は精子先体主部に3パターンの局在が認められたが、PLCζは先体後部または尾部のみであり、双方の局在に関係性はなかった。SPACA1の局在は体外受精成績に相関が認められたがPLCζでは相関がなく、PLCζはSPACA1の卵活性化に関連性はないと示唆された。 次に (2)化学療法誘導性マウスにおける精巣・精子中のSpaca1の発現および疑似Spaca1低発現マウスの作出を行った。生後5週齢のマウスを対照区、Busulfan投与区(22mg/kg, 44mg/kg)の3群に分けた。Busulfan投与から6週間目の精巣は低重量を示し、部分的な精巣細胞の喪失が観察され、円形精子細胞、後期精子細胞のSpaca1の局在は投与量依存的に差異があった。Busulfan投与により精巣上体尾精子の形態に影響はなかったが、運動率およびSpaca1 index*は低下した。 次に(3) Recombinant SPACA1(R-SPACA1)注入による卵子の活性に及ぼす影響の検討を行った。SPACA1 indexが良好なヒト不妊治療施行患者の余剰精子を対象に、マウス卵に注入するR-SPACA1の定量を行った。現在、(2)で得られた凍結精子を卵細胞質に注入したのち、囲卵腔にR-SPACA1を注入または、精子とR-SPACA1を同時に卵細胞質へ注入し、胚の発育過程を観察している。本研究期間内に十分な結果を得ることができなかったため、進行中であるが近日中に結果が得られる予定である。 *SPACA1 index…1個の精子中ではなく単位精子数あたりのSPACA1量と相関
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