HTLV-1キャリア妊婦において妊娠、分娩に伴う経時的なHTLV-1プロウイルス量(PVL)の推移を明らかにすることで、妊娠に伴う病態生理の解明を目指した。1) 検体集積状況:平成29年度までにHTLV-1キャリア妊婦36名およびHTLV-1非感染妊婦17名の検体を集積した。2)キャリア妊婦におけるHTLV-1 PVLの推移:妊娠初期、中期、後期、産褥期の母体血からHTLV-1 PVLを測定した。HTLV-1 PVLは低いものから高いものまで個体差が大きかったため、高PVL群と低PVL群の2群に分けて検討した。両群ともに妊娠中はPVLが横ばいで推移したが、産褥期におけるPVLは妊娠中のそれと比較して有意に上昇していた(P<0.05)。3)キャリア妊婦および非感染妊婦における制御性T細胞数(Treg)およびsIL-2Rの推移:キャリア妊婦および非感染妊婦において、TregとsIL-2R値の各時期における両者間の比較を行った。妊娠中は両者間に有意な差は認めなかったが、産褥期においてTregおよびsIL-2R値いずれもHTLV-1キャリア妊婦が有意に高かった(P<0.05)。さらに、sIL-2R値については、両群ともに妊娠初期と後期の値を比較すると有意に低下していた(P<0.05)。4) 妊娠中のHTLV-1感染の状態と産科合併症との関連を明らかにする:集積したキャリア妊婦において産科合併症の発症は妊娠高血圧症候群2名、切迫早産2名であった。5) HTLV-1キャリア妊婦におけるHTLV-1感染の状態と母子感染との関連解析:HTLV-1母子感染が成立したかどうかは長崎県の抗体スクリーニングシステムにおいて3歳以降の抗体検査で判定される。本研究で集積したHTLV-1キャリア妊婦36名については、研究期間中に抗体検査が行われた例がおらず、母子感染との関連解析は行うことができなかった。
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