研究課題/領域番号 |
16K20200
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
甲斐 健太郎 大分大学, 医学部, 客員研究員 (90457622)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脱落膜化 / マイクロRNA / 子宮内膜 / 子宮内膜症 / Prolactin / IGFBP1 |
研究実績の概要 |
①in vitro脱落膜化実験モデルの構築 良性子宮疾患で子宮摘出術を施行された患者の正常子宮内膜組織から正常子宮内膜間質細胞(normal endometrial stromal cells: NESCs)を、卵巣子宮内膜症性のう胞に対する付属器摘出術又は腫瘍核出術を施行された患者の卵巣子宮内膜症組織から、卵巣子宮内膜症間質細胞(endometriotic cyst stromal cells: ECSCs)を分離・培養した。培養細胞にdibutyryl cyclic-AMP 0.5mMとジエノゲスト 100nMを添加し、in vitro脱落膜アッセイ実験モデルを構築した。 ②miRNA及びmRNAの網羅的発現解析の実施 ECSCsと脱落膜化ECSCs、NESCsと脱落膜化NESCs(全てn=4)とを比較したmiRNA microarray及びgene expression microarrayを行った。miRNA microarrayの結果、miR-30a及びmiR-30eの発現増強が脱落膜化NESCsに認められた。一方、miR-210の発現増強が脱落膜化ECSCsに認められた。現在までの研究成果から、miR-30a及びmiR-30eが正常子宮内膜間質細胞の脱落膜化を制御するが、子宮内膜症間質細胞ではこの制御機構が欠落していること、miR-210が子宮内膜症間質細胞の脱落膜化を制御する可能性が示された。また、本研究によって、miRNAを介した脱落膜化調節機能の異常が子宮内膜症の病態形成に関与する可能性も示された。 ③パスウェイ解析の結果、miR-30の下流にKruppel-like factor 9- IGFBP1経路とTolloid-like(TLL)1/TLL2/Paired like homeodomain 1/Period circadian clock(PER)2/PER3-PRL経路が、miR-210の下流にTyrosine-protein phosphatase non-receptor type 1-Growth hormone receptor-Insulin-like growth factor1(IGFBP1)経路とE2F transcription factor 3-Thymidine kinase 1-Prolactin(PRL)経路が抽出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標だった上記①から③が達成されたことから、現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると考えられる。特に、miRNA microarray解析によって、健常群(NESCs)及び疾患群(ECSCs)でそれぞれひとつずつのmiRNAが抽出された点が大きな成果だった。一方、miRNA microarray及びgene expression microarrayのデータを投入したパスウェイ解析には予想以上の時間を要した。In slico解析のノウハウが乏しかったため、専門技術者と何度も打ち合わせを行いながら、試行錯誤の末、候補ネットワークを抽出した。
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今後の研究の推進方策 |
①遺伝子発現における再現性を検証するために、抽出されたネットワーク上のシグナル伝達分子について、脱落膜化刺激による発現変化をreal time RT-PCR法を用いて定量する。 ②培養細胞における再現性を検証するために、培養細胞上で、抽出されたmiRNA及び脱落膜化の指標となる分子(IGFBP1とPRL)に関してin situハイブリダイゼーションを行い可視化する。 研究計画書では、脱落膜化マーカー遺伝子2種(IGFBP1とPRL)と発現変動を示したmiRNAを指標にしたパスウェイが抽出されない場合は、他の報告者からの脱落膜化マーカー遺伝子と発現変動を示したmiRNAとを指標に再解析を行う予定であった。しかし、miR-30、miR-210が抽出されたことから、再解析は不要になった。
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