ジエノゲストは、子宮内膜増殖抑制作用と脱落化誘導能を有し、異所性子宮内膜組織を有する子宮内膜症患者の内分泌療法に用いられる。脱落膜化機構ネットワーク経路は、mRNA及びタンパク質発現レベルで解明されつつあるが、転写後修飾に関しては未解明である。そこで本研究では、マイクロRNA(miRNA)によって制御されるジエノゲストの脱落膜化機構の解明を試みた。昨年度までに、脱落膜化実験モデルの構築、脱落膜化刺激下のmRNA及びmiRNAの発現解析を終了した。最終年度は、得られた発現解析データを用いてパスウェイ解析を行い、miRNA-mRNA相互作用を介した脱落膜化機構のネットワーク経路を検索・抽出した。 その結果、miR-30a及びmiR-30eの発現増強が、脱落膜化正常子宮内膜間質細胞に認められた。一方、miR-210の発現増強が、脱落膜化卵巣子宮内膜症性のう胞胞間質細胞に認められた。また、miR-30の下流にKruppel-like factor 9- IGFBP1経路とTolloid-like(TLL)1/TLL2/Paired like homeodomain 1/Period circadian clock(PER)2/PER3-PRL経路が、miR-210の下流にTyrosine-protein phosphatase non-receptor type 1-Growth hormone receptor-IGFBP1経路とE2F transcription factor 3-Thymidine kinase 1-PRL経路が抽出された。 以上から、miR-30a及びmiR-30eが正常子宮内膜間質細胞の脱落膜化を制御するが、子宮内膜症間質細胞ではこの制御機構が欠落していること、miR-210が子宮内膜症間質細胞の脱落膜化を制御することが明らかとなった。
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