当院に通院している患者から同意を得て、妊娠前(卵胞期・黄体期)、妊娠中(初期、中期、後期)に末梢血を採取した。卵胞期26例、黄体期18例、妊娠初期27例、中期8例、後期20例から採取して、磁気ビーズを用いて末梢血NK細胞(pNK)を分離した。そのうち同一人物から採取した症例については、卵胞期-黄体期9例、黄体期-妊娠初期6例、卵胞期-妊娠初期10例、妊娠前-妊娠中12例採取することができた。 これらのサンプルからpNKを分離して、血球計算盤を用いて末梢血単核球数(PBMC)とpNK細胞数をカウントしたところ、新奇的知見と思われる所見を得た。卵胞期から黄体期にかけてpNK細胞数において有意な増加を認め、またpNK細胞数とpNK/PBMC(%)において黄体期から妊娠初期にかけて有意に減少し、さらに妊娠初期から後期に進むにつれて有意な減少を示し、妊娠前と比較して妊娠中に有意に減少していた。これらの結果から、先行研究の妊娠初期から後期にかけてだけでなく、卵胞期から黄体期にかけて、また黄体期から妊娠初期にかけてpNKの遺伝子発現が変化している可能性が考えられた。この仮説を検証するために、今後、卵胞期、黄体期、妊娠初期の末梢血を用いて、遺伝子発現マイクロアレイ、miRNAマイクロアレイを行う予定である。 我々の先行研究では、妊娠初期と後期のpNKの遺伝子発現マイクロアレイによる網羅的解析では、妊娠維持機構に関与する可能性のあるKIR (Killer Immunoglobulin-like Receptor) などの遺伝子発現が有意に変化していた。これらの遺伝子発現変化のうちの主なものについては RT-PCRで確認(validation)した。 以上の結果について、英語論文を作成した。現在、投稿先の雑誌を選定している。
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