研究課題/領域番号 |
16K20205
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
小林 佑介 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (10439763)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | メバロン酸合成経路阻害剤 / ビスフォスフォネート / L-778123 |
研究実績の概要 |
①メバロン酸合成経路阻害剤を用いた細胞増殖抑制・腫瘍進展抑制効果の検証 メバロン酸合成経路の各段階を阻害するYM-53601、6-Fluoromevalonate、Lonafarnib、GGTI-298を用いて卵巣癌細胞株SKOV3およびOVCAR5に対する細胞増殖抑制効果を検証し、濃度依存性に増殖抑制効果を示すことを明らかとした。特にファルネシルピロリン酸合成酵素を阻害するビスフォスフォネート製剤の一つであるアレンドドロネートは、SKOV3に対して13.36uM、OVCAR5に対して32.86uMのIC50値を示した。そこでアレンドロネートを卵巣癌自然発症モデルmogp-TAgマウスに投与したところ、control群と比較して有意に腫瘍形成を抑制した。さらに腫瘍細胞における増殖マーカーKi-67、早期卵巣癌マーカーであるLAMC1の発現もアレンドロネート投与群において有意に抑制されていた。以上よりスタチン製剤だけでなく、メバロン酸合成経路を阻害する薬剤自体が卵巣癌の抗腫瘍薬となりうる可能性を明らかとした。
②メバロン酸合成経路を標的とする新規化合物の作成 上記の研究成果で、メバロン酸合成経路下流分枝に関与するファルネシル転移酵素ならびにゲラニルゲラニル転移酵素をLonafarnib、GGTI-298で阻害することで有意に強い細胞増殖抑制効果が認められたことから、これらの転移酵素が卵巣癌の増殖に深く関与してることが明らかとなった。そこでファルネシル転移酵素ならびにゲラニルゲラニル転移酵素を同時阻害するL-778123を過去の文献を参照しつつ化学合成し約15gを得た。今後はスタチン製剤とL-778123の細胞増殖抑制効果を比較検討し、臨床試験に用いる薬剤を絞り込む予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までにメバロン酸合成経路阻害剤を用いた細胞増殖抑制・腫瘍進展抑制効果の検証をほぼ終えており、特にビスフォスフォネート製剤のドラッグリポジショニングによる卵巣癌への抗腫瘍薬としての有用性を明らかにすることができた。ファルネシル転移酵素ならびにゲラニルゲラニル転移酵素を同時阻害するL-778123の化学合成に時間を要したが、初年度末には得られており研究計画への影響はないと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
①L-778123を用いた細胞増殖抑制効果の検証 ファルネシル転移酵素ならびにゲラニルゲラニル転移酵素を同時阻害するL-778123と、スタチン製剤との間で細胞増殖抑制効果を比較検討し、臨床試験に用いる薬剤を絞り込む。また、その作用効果の差に関与する因子を明らかとするため、両群間でマイクロアレイ解析行い検討する。
②臨床試験適格基準を作成するための評価系の樹立 各卵巣癌細胞株においてもスタチン製剤に対するIC50値は異なるため、各細胞間の分子生物学的相違をメバロン酸合成経路関連遺伝子群の発現に焦点をあてて解析し、スタチン製剤等の効果が期待できる症例の抽出評価系を樹立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ファルネシル転移酵素ならびにゲラニルゲラニル転移酵素を同時阻害するL-778123の化学合成に時間を要したため、L-778123を用いた実験系を初年度に行えなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
上述のL-778123は年度末には得られており、今年度は計画通りに①L-778123を用いた細胞増殖抑制効果の検証、②臨床試験適格基準を作成するための評価系の樹立について、助成金により遂行していく予定である。
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