【目的】 早産は大きな問題であり、適切な治療のための分娩予測が望まれているが、陽性的中率が高い検査はない。我々は分娩機序のなかで子宮や胎盤などへの白血球浸潤が重要であることに着目し、妊娠週数が進むに従い白血球遊走数が漸増すると仮定し、白血球組織侵入アッセイモデルを用いて分娩時期予測ができるかどうか全妊娠期間を通じて検討した。 【方法】 Neuro probe社のmultiwell chemotaxis chamberを用いた。この装置では下段の物質に誘導され、上段の細胞は下段に侵入する。全妊娠期間中に5回(1st、2nd、3rd trimester、陣発時、産褥3日目)採血を行い、チャンバーの上段には妊婦末梢血から得られた白血球10万個、下段には満期産経腟分娩で娩出した卵膜から得られた抽出液を入れた。アッセイ終了後に下段の溶液を採取し、白血球及びその分画や組成をフローサイトメトリーによってカウントした。 【結果】 白血球遊走数は2nd trimesterが1st trimesterに比べ有意に増加した(p=0.03)。また仮定に反して、白血球遊走数は2nd trimesterが3rd trimesterに比較し有意に増加していた。また、今回の実験では3rd trimesterと陣痛発来時の白血球遊走数に有意差は認めなかった。遊走した白血球は約80%以上が顆粒球であり、その中でもCD11b陽性細胞が約95%と大部分を占めていた。その割合は妊娠期間に限らず一定していた。 【結論】 妊娠週数の変化で白血球は特異的に性質を変え、卵膜抽出液に対し、漸増ではなく、特に2nd trimester(と陣痛発来時)でCD11b陽性細胞が多く遊走した。
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