研究課題/領域番号 |
16K20208
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
村上 圭祐 順天堂大学, 医学部, 助教 (90597064)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 子宮内膜 / 間葉系幹細胞 / 脱落膜化 / レスベラトロール |
研究実績の概要 |
【目的】排卵後6-10日目の着床期に、子宮内膜は脱落膜化と呼ばれる分化反応を起こし、妊孕性の高い子宮内膜組織を再構築している。この子宮内膜脱落膜化反応が適切に起こることが着床とその後の妊娠維持に肝要であるが、脱落膜化の詳細な制御メカニズムについては未だ分かっていない部分が多い。子宮内膜にも間葉系幹細胞が存在することが最近の研究で分かってきており、間葉系幹細胞の機能低下が脱落膜化不全・反復着床障害の原因になっている可能性がある。レスベラトロールはSirtuin (SIRT)1を活性化し、レチノイン酸シグナルを含む様々な分子経路を介し細胞老化や酸化ストレスを抑制する。また間葉系幹細胞の自己複製を促進することも報告されている。臨床においては卵巣予備能温存の目的で既に応用されているが、着床における子宮内膜脱落膜化への影響を解析した報告はない。そこで我々は、レスベラトロールが子宮内膜の老化や脱落膜化反応へ及ぼす影響を解析した。 【方法】インフォームドコンセントを得た患者より子宮内膜を採取し、初期培養後、子宮内膜間質細胞を分離・増殖した。cAMPおよびプロゲステロンを添加し細胞をin vitroで脱落膜化させ、脱落膜化過程でレスベラトロールを添加し、非添加群とレチノイン酸シグナル関連遺伝子および脱落膜マーカー(PRL, IGFBP1)の発現を分子解析した。 【研究成果】レスベラトロールの添加により子宮内膜間質細胞のSIRT1発現が亢進した。またレスベラトロール添加により、子宮内膜脱落膜化過程においてPPARβ/δの発現増加(細胞分化の誘導)とCRABP2-RARαシグナル(アポトーシスの誘導)の発現抑制を認め、2つのレチノイン酸シグナルを制御していた。しかし、脱落膜化マーカーであるPRL、IGFBP1の発現は著明に抑制された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
臨床業務が忙しいこともあり、細胞培養実験が当初予定していたより進行できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今までの研究成果で、レスベラトロールが子宮内膜間質細胞に対しても抗老化作用があることは分かったが、脱落膜化過程での短期添加では脱落膜化反応を抑制することが明らかになった。今後、レスベラトロールが子宮内膜間葉系幹細胞の活性化を促進するかどうか追加実験を行う。また、増殖期に長期的にレスベラトロールを添加することで、脱落膜化反応が促進されるかについても追加実験を行う。 内膜微小掻爬(LEI)を加えることでの子宮内膜間葉系幹細胞活性化についても今後実験を行う。 レスベラトロールなどの薬剤による方法と、LEIによる機械的刺激による方法と、子宮内膜間葉系幹細胞の活性化にどちらが効果的か比較検討を行う。 当院の不妊外来に通院する反復着床障害女性にインフォームドコンセントを得たのちに黄体中期にLEIを加え、LEI施行前後周期の月経血を採取し、月経血のセクレトーム変化をマルチプレックスサスペンションアレイを用いて網羅的に解析する。①妊娠例ーLEI施行前、②妊娠例ーLEI施行後、③非妊娠例ーLEI施行前、④非妊娠例ーLEI施行後の4群間で更に解析し、LEIにより分泌が促進され妊娠成立に寄与するサイトカインの同定を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた学会の滞在期間が仕事の都合で短くなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
試薬が不足しているので、試薬の購入資金に充てる。
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