ヒトは月経を有する数少ない生物であり、周期的な脱落膜化反応と月経が受容能獲得に重要なステップである。子宮内膜脱落膜化が、着床・その後の妊娠維持に重要であることはよく知られいているが、着床しなかった場合に次周期の子宮内膜再生に及ぼす影響についてはまだ分かっていない。本研究では、子宮内膜の脱落膜化反応がその後の子宮内膜再生能や脱落膜化能に及ぼす影響について解析した。 当院で婦人科良性疾患に対して腹腔鏡下手術を施行した患者13名より同意を得て子宮内膜を採取した。In vitroでヒト子宮内膜間質細胞に脱落膜化刺激(cAMP+MPA)を8日間加えた。U群(脱落膜化刺激なし)とD群(脱落膜化刺激あり)でコロニー形成能を比較したところ、U群 0.1(0-1.4)、D群 0.8(0.2-2.5)で有意にD群で高かった(p=0.005)。次に、U群とD群を継代後に再度脱落膜化刺激を加え、脱落膜化マーカー(PRL、11βHSD1)の発現を比較したが両群間で有意差は認めなかった。次に、脱落膜化反応がその後の再生能に及ぼすパラクライン効果を調べるために共培養下でのコロニー形成能を比較した。U群の共培養によるコロニー形成能は、インサート内容: Medium 0.2(0.1-0.9)、U群 0.4(0.3-2.1)、D群 1.1(0.4-2.9)であり、D群と共培養した時に有意に高値を示した。 D群の共培養によるコロニー形成能は、インサート: Medium 0.5(0.1-1.0)、U群 0.8(0.2-3.4)、D群 1.4(0.5-4.2)であり、D群と共培養した時に有意に高値を示した。子宮内膜脱落膜化はコロニー形成能の改善やパラクラインシグナリングを介して、次周期の子宮内膜再生に影響を及ぼしていることが示唆された。
|