慢性期の末梢前庭障害の治療において、薬物治療のエビデンスは乏しく、平衡リハビリテーションの重要性が近年提唱されている。身体の平衡感覚は、前庭覚、視覚、深部知覚の3つの感覚情報が入力され、小脳・脳幹といった中枢で統合されることにより保たれており、これら3つの情報の協調が重要となる。特に、前庭覚と視覚は頭部回転時の前庭動眼反射に代表されるように密接な関連がある。本研究は前庭系と眼球運動系の相互作用を利用した新しい平衡リハビリテーションを開発することを目標としている。 平成30年度は、平成29年度の引き続き、video Head Impulse Test(vHIT)を末梢前庭障害患者に施行し、3つの半規管すべての機能評価をvHITで行えることを確認した。メニエール病患者においてはvHITでは異常が検出されにくい等、疾患による差異も確認され、平衡リハビリテーションを行う対象疾患にも考慮が必要と考えられた。vHITは聴神経腫瘍症例の半規管機能評価には有効と考えられ、症例を蓄積した。その結果、前半規管は他の半規管に比べ障害を受けにいこと、半規管障害は腫瘍径とは相関しないが、難聴の程度と相関することが明らかとなった。
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