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2016 年度 実施状況報告書

喫煙性嗅覚障害の分子機序と嗅上皮再生環境の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16K20231
研究機関東京大学

研究代表者

上羽 瑠美  東京大学, 医学部附属病院, 助教 (10597131)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードタバコ煙 / 嗅神経上皮 / 嗅覚障害
研究実績の概要

本研究ではまず初めに,タバコ煙溶液(cigarette smoke solution: CSS)を用いて喫煙モデル動物を作製し,嗅上皮傷害・回復過程を検証した.C57BL/6マウス(8週齡)にCSSを約1ヶ月点鼻吸入させ,喫煙モデルを作製した後,OMP+成熟嗅細胞やKi67+分裂細胞,SOX2+嗅覚前駆細胞,Cas3+アポトーシス細胞の数と,嗅覚行動実験結果を対照群と比較した.さらにq RT-PCRによりIL-1βとIL-6を測定した.その結果,CSS点鼻により嗅覚前駆細胞と成熟嗅細胞数が減少し,嗅覚障害が生じていた.また炎症性サイトカインも上昇していた.喫煙性嗅覚障害は嗅覚前駆細胞の抑制による成熟嗅細胞の減少により生じ,禁煙による炎症改善に伴って障害が回復する事が示唆された.
次に,メチマゾール(methimazole, MET)による嗅上皮障害モデルを用いて,喫煙が嗅上皮障害回復過程に与える影響を検証した.C57BL/6マウス(8週齡)にMETを腹腔内投与後,CSSを点鼻吸入させた(タバコ群).点鼻7・14日後のOMP+成熟嗅細胞など嗅細胞分化過程の各種細胞数を計測し,行動実験と合わせて生食点鼻対照群と比較した.成熟嗅細胞数は,タバコ群が対象群と比較し有意に少なく.行動実験では14日後に対象群で嗅覚の回復を認めたものの,タバコ群では嗅覚障害が持続していたことから,CSSは,嗅覚前駆細胞の分裂及び分化過程を障害し,嗅上皮障害後の再生を遅延させる事が示唆された.
本年度最後に,METによる嗅上皮障害マウスモデルを用いて,喫煙による嗅上皮再生抑制環境への,成長因子の一つであるIGF-1の関与に関して検証し,タバコ煙による障害嗅上皮再生遅延にはIGF-1の低下が関与していることが示唆された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

メチマゾールによる嗅上皮障害マウスモデルを用いて,喫煙による嗅上皮再生抑制環境への,成長因子の一つであるIGF-1の関与に関する検証まで達成しているため。

今後の研究の推進方策

2年目は,加齢喫煙マウスの嗅粘膜・嗅球における嗅細胞cell lineageと神経栄養や炎症動態の解明及び、アレルギー喫煙マウスの嗅粘膜・嗅球における嗅細胞cell lineageと神経栄養や炎症動態の解明に向けて準備を進め、検証する予定である。

次年度使用額が生じた理由

加齢モデルマウスを作成中であり、次年度に解析費用や維持費用が大きく計上されると見込まれたため。

次年度使用額の使用計画

加齢モデルを作成、維持するために費用がかかると思われる。また、遺伝子解析やタンパク解析に必要な試薬などの費用が見込まれる。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2016 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Cigarette smoke delays regeneration of the olfactory epithelium in mice in Mice.2016

    • 著者名/発表者名
      ②Ueha R, Ueha S, Kondo K, Sakamoto T, Kanaya K, Suzukawa K, Nishijima H, Kikuta S, Matsushima K, Yamasoba T
    • 雑誌名

      Neurotoxicity Research

      巻: 30(2) ページ: 213-224

    • DOI

      10.1007/s12640-016-9617-5.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] マウス嗅上皮再生過程にタバコ煙が及ぼす影響とIGF-1の関与2016

    • 著者名/発表者名
      上羽瑠美 近藤健二 坂本幸士 鈴川圭吾 菊田周 金谷佳織 西嶌大宣 山岨達也
    • 学会等名
      第55回日本鼻科学会
    • 発表場所
      宇都宮
    • 年月日
      2016-10-13 – 2016-10-15
  • [学会発表] Damage to olfactory progenitor cells is involved in cigarette smoke-induced olfactory dysfunction in mice2016

    • 著者名/発表者名
      Rumi Ueha, Satoshi Ueha, Francis Shand, Kouji Matsushima, Kenji Kondo, Shu Kikuta, Kaori Kanaya, Hironobu Nishijima, Tatsuya Yamasoba
    • 学会等名
      70th Tobacco Science Research Conderence
    • 発表場所
      Florida, USA
    • 年月日
      2016-09-18 – 2016-09-21
    • 国際学会
  • [学会発表] 加齢がマウス嗅上皮環境に及ぼす影響の解析-嗅覚前駆細胞,成長因子とサイトカイン-2016

    • 著者名/発表者名
      上羽瑠美 近藤健二 藤巻葉子 後藤多嘉緒 二藤隆春 山岨達也
    • 学会等名
      第16回日本抗加齢医学会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2016-06-09 – 2016-06-11
  • [備考] 東京大学耳鼻咽喉科「研究トピックス」2016年3月:タバコ煙は嗅上皮障害後の再生を遅延させる

    • URL

      http://www.h.u-tokyo.ac.jp/orl/topics/

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公開日: 2018-01-16  

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