研究実績の概要 |
本研究では腺様嚢胞癌の神経周囲浸潤メカニズムを多方面から解析している。 平成28年度は、腺様嚢胞癌の免疫逃避機構の解析を主に行った。PD-L1の発現評価を免疫染色にて行い、PD-L1抗体はclone SP142 (Spring Bioscience)を使用した。腫瘍細胞における10%以上の発現をPD-L1陽性と判定したが、解析37症例における発現率は21%であった。神経周囲浸潤や病理組織型やNGF/TrkA過剰発現といった臨床病理学的因子とPD-L1の発現状況に関連性は認めなかった。また生存率との関連性は認めなかったが、PD-L1陽性症例では、局所制御率が統計学的に有意に低かった(陽性vs陰性, 0% vs 54%, p=0.01)。さらに、多変量解析では独立した因子であった(HR 2.96, 95%CI 1.07-8.15)。次年度はさらなる、免疫応答の解析を計画している。 本研究では、腺様嚢胞癌においてNGF/TrkA系シグナルの過剰発現が65%で生じ、神経周囲浸潤及び、局所予後に関与していることがすでに明らかになっている。次年度はNGF/TrkA系の下流シグナルの解析に加え、Trk受容体をコードしているNTRKを含めた遺伝子の変異解析を検討中である。特にTrkA受容体をコードしているNTRK1に関しては、他癌において、様々な遺伝子との融合が報告されておりこれらについて集中的に解析を考えている。
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