7か月齢の高齢マウスを作成し、嗅上皮障害後に神経栄養因子/細胞増殖因子を局所投与し、コントロール群と嗅上皮の組織学的な改善度、および嗅覚行動の 改善を検討した。チアマゾール腹腔内投与による嗅上皮傷害後、 4日目に鼻腔にbFGF(basic fibroblast growth factor、フィブラスト)単独、IGF-I(insulin like growth factor type 1、ソマゾン)単独、およびそれらの混合を点鼻した。我々の以前の嗅上皮のマイクロアレイ解析にて、チアマゾール傷害後1週間以内にこれら神経栄養因子の発現上昇が認められたため、1週間以内にこれらの因子を補充することが有効と考えられた。 各神経栄養因子はハイドロゲルに浸し点鼻を行った。各神経栄養因子は既に市販されている薬品を用い、濃度は、添付文書通りに配合したものを用いた。チアマゾール傷害後11日、18日、25日後の嗅上皮組織を採取した。その結果、18日目、25日目の群においても嗅上皮の厚さ、成熟嗅神経細胞に、組織学的な改善を認めた。嗅覚行動においては有意な差を認めなかった。嗅覚行動実験はBuried Food Test(空腹にしたマウスに、チップに埋もれたエサを探索させる)やバニリンの嗜好性を利用した飲水テスト(飲水量の差を検討)、油のにおいによる嗅行動回数の比較試験等検討したが、いずれも実現性・再現性に乏しく検討の余地が見られた。 高齢マウスに対する点鼻において、実施手技が個人の感覚によるものが大きいが、一定の量が入れば安定した効果が得られると考えられた。
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