神経栄養因子を局所投与(点鼻)することによる嗅上皮再生促進効果を検討した。神経栄養因子としてはFGF (fibroblast growth factor) 、IGF1 (insulin-like growth factor-1) を用いた。また、これら神経栄養因子をより効果的に投与するため、局所投与においては徐放性に優れたゼラチンベースのハイドロゲルを用いた。 【方法】①高齢ICRマウス(7か月齢)に抗甲状腺薬メチマゾールの腹腔内投与を行い、嗅上皮傷害モデルを作成した。メチマゾール投与後3日目に、経鼻投与した。コントロール群には生食を用いた。局所投与は1回のみで、片側(右側)鼻腔に行った。メチマゾール投与後18日目に嗅上皮を採取し、嗅球を通る冠状断で鼻腔の薄切標本を作製した。免疫染色を行い、生食点鼻群、FGF点鼻群、IGF点鼻群における嗅上皮の厚さ、成熟嗅神経細胞数、幼若な嗅神経細胞数の比較を行った。なお、測定は個体ごとに鼻腔の同側嗅上皮の任意の3点で行った。 ②高齢ICRマウス(7か月齢)にメチマゾールによる嗅上皮傷害を起こさず、ハイドロゲルに含浸させたFGFの単回投与のみを施行した。 【結果】①FGF2点鼻群、IGF1点鼻群は、いずれもコントロール群と比較して、成熟嗅神経細胞を表すOMP (olfactory marker protein) 陽性細胞が増加し、嗅上皮の厚みが増大した。幼若な嗅神経細胞を表すGAP43 (growth associated protein 43) 陽性細胞の数については有意差を認めなかった。 ②過去の報告と同様、GAP43陽性細胞数が増加、OMP陽性細胞数に関しては変化を認めなかった。単回投与でのハイドロゲル点鼻における神経栄養因子の徐放性能が示された。
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