近年開発されたshear waveエラストグラフィは、音響放射圧(acoustic radiation force impulse: ARFI)により発生した超音波せん断波(shear wave)の組織伝達速度から組織弾性を定量的に評価できる可能となる可能性がある。しかし、頸部リンパ組織において、shear wave伝達速度と組織構造の関係は不明であった。本研究では、頭頸部癌リンパ節転移評価において、AFRIによるshearwaveエラストグラフィの有用性を検証する。 平成28年は、頭頸部癌のリンパ節転移診断におけるshear waveエラストグラフィの診断精度について検証をおこなった。5mm幅でshear wave speedを測定するタイプのshear wave エラストグラフィでは、生体内のとう転移リンパ節の測定ではエラーを出すことが多いことが判明した。生体内と、摘出標本を比較した検討では、転移リンパ節の組織的な不均質さがエラーの原因と推察された。 このため、平成29年は同じ音響圧迫(ARFI)を利用したARFI imagingによる評価へ切り替えた。頭頸部癌転移リンパ節80個について、術前のshear waveエラストグラフィと摘出標本におけるエラストグラフィ(ARFI imaging)を測定し、画像診断のためのスコアーかを行なった。さらに転移診断のための判定基準を作成した。その結果、感度95%、特異度92%、正診率94%という、従来のエラストグラフィと比較し高い診断精度を示した。この判定基準を元に、診断精度を検証した。現在は、転移リンパ節内に伝播するshear wave speedを1mm幅で多点測定を行い、診断に有用かどうかを調べているところである。以上の結果を国内学会、国際学会で発表した。依頼講演もおこない、関連した英語論文を出版、さらに英語論文を作成中である。
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