研究課題/領域番号 |
16K20251
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
高木 大樹 愛媛大学, 医学系研究科, 助教 (10448376)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 真珠腫性中耳炎 / 蛍光顕微鏡 / galectin-7 |
研究実績の概要 |
遺残性真珠腫の根絶は古くからの耳科学の課題である。そのためには術中上皮の完全摘出が原則であるが、顕微鏡を用いても微小サイズの上皮は確認困難であった。一方、人の中耳腔において、galectin-7は真珠腫に特異的に発現するタンパク質である。これを利用して手術中に真珠腫上皮をgalectin-7抗体で蛍光免疫染色し、蛍光顕微鏡を用いて同定すれば、真珠腫の遺残を根絶できる。このアイディアとシーズを臨床展開することが本研究の目的である。臨床展開を始めるには、ヒト中耳に投与可能な新たなgalectin-7抗体試薬の作製が必要である。また、新規作製する染色試薬の染色性や安全性確認が不可欠であると考え、本研究を計画した。 本年度の研究目標としてはプロテオサイエンスセンターおよび先端医療創生センターのバイオイメージング部門と共同でgalectin-7の抗体生成を行い、臨床で使用可能な試薬を作製することである。臨床使用を前提としているため、一次抗体に蛍光標識を結合させ、ワンステップでの蛍光染色が可能な抗体試薬の精製を目指す。試薬の精製が完了後、手術にて摘出した真珠腫標本を用いて、上記手法で作製した抗体試薬を加えて真珠腫に存在するgalectin-7を標識する。最終的には抗体試薬の至適濃度や染色に要する時間など、臨床使用へ向けてのデータを採取する。 現在抗体精製に難渋しているため、進歩状況が遅れている。観察に用いる蛍光実体顕微鏡では、オプションとして複数の蛍光波長が選択できるようになっているため、顕微鏡の励起波長を変えて観察するなど、代替手段に関しても検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初予定していた抗体精製が、費用対効果が不良などの理由から遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
抗体精製が困難であった場合を想定して、真珠腫と周囲組織を識別する別の方法も検索中である。具体的には被標識側(真珠腫)からの視点として、標識の対象となる他のタンパク質がないか、あるいは観察側(顕微鏡)の観点から、蛍光顕微鏡の条件を変更することで、真珠腫を他の組織から区別可能かどうか、である。試薬の問題が解決されれば、当初の予定通り安全性評価や至適濃度、至適染色時間を検討する。あるいは他の標識となりうるタンパク質がみられた場合も同様の評価を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の成果を国内の学会、研究会で発表する予定であったが、抗体精製の遅れから十分な研究成果を得ることができず、発表に至っていない。
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次年度使用額の使用計画 |
引き続き本研究を遂行するにあたり、必要な消耗品に過半を使用する。得られた研究の成果を基に順次、国内、海外の学会、研究会で発表を行う予定である。
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