中咽頭扁平上皮がんはタバコや飲酒が関係する「ヒトパピローマウイルス(human Papillomavirus: HPV)陰性中咽頭がん」と性行動などによって感染し得る特定の型のHPVが関連する「HPV陽性中咽頭がん」に分けられる。 本年度は前年度から引き続き、H30年度末までに高知大学医学部附属病院で新たに中咽頭癌と診断された39症例について、種々の腫瘍ウイルスの検出率および共感染率を調べた。調べたウイルスはHPVに加えてEBV(Epstein-Barr virus: EBV)および当初はメルケル細胞がんで検出され、その後各種がんでも検出され得ると報告されたメルケル細胞ポリオーマウイルス(Merkel cell polyomavirus: MCPyV)である。サンプルは余剰生検材料を使用し、DNAを抽出後リアルタイムPCRにてウイルスゲノムの検出を行なった。HPV陽性例についてはゲノタイプも調べた。 HPVは39例中22例(56.4%)で検出された。そのゲノタイプの内訳はHPV16型が21例で、HPV18型が1例であり、HPV陽性中咽頭がんのほとんどはHPV16型であった。EBVの検出率は33.3%(13例/39例)、MCPyVの検出率は7.7%(3例/39例)であった。2種類の腫瘍ウイルスの共感染率は、HPV16陽性かつEBV陽性:28.2%(11例/39例)、HPV16陽性かつMCPyV陽性:0%(0例/39例)、EBV陽性かつMCPyV陽性:0%(0例/39例)であった。HPV16、EBV、MCPyVの3種類の腫瘍ウイルスが同時に感染している症例はなかった。 以上、HPV16陽性中咽頭がんの約3割にEBVの共感染が認められたが、新規腫瘍ウイルスであるMCPyVとHPV16陽性中咽頭がんとの関連性は低いと考えられた。
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