研究課題
唾液腺癌の形態機能病理学的解析を基に分子生物学的解析を行うことで将来の新たなテーラーメイド治療の確立を目指すことを研究の目的とした。まずは唾液腺癌の多彩な組織型の診断を確定させること、予後を含めた臨床病理学的情報を解析することが重要である。従って、初年度および2年目は九州大学および九州がんセンターでの症例の収集及び診断の確定・臨床病理学的情報の収集を行なった。中高悪性度癌、進行癌、断端陽性症例が予後不良であり、進行期中高悪性度癌では放射線治療が優位に局所再発が少ないという結果が得られた。同結果は学会発表を行い、2019年Journal of Laryngology and Otologyに掲載予定である。2年度目および最終年度は、初年度および2年目に収集・解析した臨床病理学的データを基に、唾液腺癌の代表的な組織であり大部分を占める粘表皮癌、唾液腺導管癌、多形腺腫由来癌、腺様嚢胞癌にターゲットを絞り解析を行なった。排出導管由来と考えられている粘表皮癌や唾液腺導管癌ではPD-L1発現の頻度が比較的高く、介在部導管の筋上皮基底細胞由来と考えられている腺様嚢胞癌はPD-L2発現の頻度が高いという結果が得られた。更に、PD-L1/L2発現が予後とも相関するという結果も同時に得られた。尚、融合遺伝子検出はDNAが十分量採取出来なかったため検討中止とした。本研究により唾液腺癌も免疫療法のターゲットとなり得る分子を発現していることを明らかにした。同結果は学会発表を行い、Oral oncology 2019に掲載されている。これら研究成果は放射線治療や免疫療法が、これまで治療選択肢のなかった進行唾液腺癌患者に対する予後改善に貢献することができる可能性を示したため非常に意義深いと考えられる。
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The Journal of Laryngology & Otology
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
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