自然免疫の中心的役割を担う好中球におけるTriggering receptor expressed on myeloid cells (TREM-1)はToll-like recepter4( TLR4)と協調的に働くことにより、細菌の貪食能を含めた自然免疫応答を増強すると報告されている。今回、鼻咽腔におけるインフルエンザ菌に対する局所粘膜免疫応答につき、TREM-1およびTLR4を中心と して細胞生物学的および分子生物学的手法を用いて解析を行った。 昨年度はTREM-1とTLR4の協調的作用を実証するために、C3H/HeNマウスおよびC3H/HeJマウスを用いて研究を行い、C3H/HeNマウスにおいては、インフルエンザ菌投与後、経時的に細菌数の低下を認め、C3H/HeJマウスと比較して細菌クリアランスの増加を認めたこと、および鼻腔内に浸潤した好中球数については、C3H/HeNマウスにおいてC3H/HeJマウスと比較して明らかに浸潤数の増加を認めており、細菌クリアランスの増加に伴い減少した事を報告した。今年度は追加実験とし、鼻汁内のTREM-1濃度をフローサイトメトリー及びRT-PCRにて測定し、C3H/HeNマウスにおいてC3H/HeJマウスと比較して6.12hrで明らかな有意差があることを証明し、TREM-1の発現強度が増加していることから、TREM-1とTLR4が協調的に作用し細菌クリアランスを促進していることが推測された。以上よりTREM-1とTLR4は協調的に働くことにより、炎症早期における好中球の遊走能や貪食能を含めた自然免疫応答を増強するものと考えられた。 上記内容を、現在論文として執筆しており、International Journal of Pediatric Otorhinolaryngologyに投稿し、査読を終了した段階である。
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