研究課題
頭頸部領域の諸症状を初発とする初期のANCA(anti-neutrophil cytoplasmic antibody)関連血管炎(AAV:ANCA associated vasculitis)は、ANCA陰性例や組織検査にて血管炎の所見が得られない症例が多く存在し、しばしば診断に難渋する。現在既存のANCA抗体検査は診断のために重要であるが、頭頸部領域に限局したAAVの約半数はANCA陰性であり、ANCA陰性であっても本疾患を否定できない。その背景として、現在の測定法ではANCAを同定できない可能性やPR3及びMPO以外ANCA対応抗原(minor ANCA)が関与している可能性、さらにANCA関連血管炎が原因でない未知の疾患の可能性が推察されている。早期診断及び病態解明のため、29名の患者血清を用いて抗原固相方式の異なるのELISAキットを用いたPR3, MPO-ANCAの測定、minor ANCAの測定、抗LAMP-2抗体の測定を行った。臨床検査でPR3, MPO-ANCA陰性であっても、異なる試薬で陽性となる症例や、BPI-ANCAやelastase ANCAといった、minor ANCAが陽性となる症例が存在した。また、患者血清中の抗LAMP-2抗体をELISAで測定し、正常コントロール血清や臨床的に活動期と非活動期で値を比較したところ、抗LAMP-2抗体は、ANCA関連血管炎患者で有意に高値で、疾患活動期において有意に高値となることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
臨床的にANCA陰性であっても抗原固相方式の異なるELISA試薬で陽性となる症例や、minor ANCAが病態に関わっている可能性のある症例が存在することが明らかとなった。本研究は、順調に進展している。
さらに症例を集積し、血清学的検討とともに中耳貯留液を用いた細菌やサイトカインの解析を進める。また、実験動物においてANCA関連血管炎性中耳炎モデルを樹立し、中耳腔内での免疫誘導について組織学的、細胞生物学的解析を行い、慢性アレルギー炎症下における持続感染の誘導機序を明らかにする。
本年度行った実験に用いた試薬等は、研究室に在庫があったため新たに購入しなかった。また、国内旅費は大学出張費より請求し、データ解析用パソコンは次年度購入予定としたため繰り越し額が生じた。
ANCA関連血管炎性中耳炎患者より採取した中耳貯留液の解析のため、ヒトサイトカインTh17アッセイキット、リアルタイムPCR用試薬(呼吸器系感染症起因ウイルス、細菌検出キット)を購入する。
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