研究課題/領域番号 |
16K20263
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
地村 友宏 鹿児島大学, 附属病院, 医員 (10709596)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | IgA腎症 / Th17 / Treg / B1cell / ホスホリルコリン / 免疫応答のbalance |
研究実績の概要 |
これまでIgA腎症患者の口蓋扁桃におけるPC特異的免疫応答を観察したところ、予後不良のIgA腎症患者では有意にPC特異的IgA産生細胞数が増加していた。しかし、末梢血中のPC特異的免疫グロブリン産生細胞は少数であり、慢性扁桃炎と比較してむしろ低値であった。これらのことからIgA腎症の背景には局所での粘膜免疫の相対的機能不全が存在すると考えており、その機序としてPCに対する免疫応答のbalanceが大きく関与しているのではないかと考えるに至っている。当初のプロトコールに沿い、扁桃摘出術を施行した患者の血液や扁桃組織のサンプルを用いて、PC特異的な免疫応答を測定し、扁桃局所でのホスホリルコリンに対する粘膜免疫応答および樹状細胞、regulatoryT細胞、Th17 helperTcellなどを解析しIgA腎症に特有の粘膜免疫調節機構を検討中である。Flow Cytometory analisisを行った。Th1,2,17のbalanceを検討すべく、IFNγ,IL-4,IL-17aを測定し、1.81%、0.34%、1.26%という結果であった。慢性扁桃炎(コントロール群)はIgA腎症群と比較してTh1系が優位である傾向がわかった。さらにIgA腎症と慢性扁桃炎との比較では、Th17とTregの比(Th17/Treg)を測定し、1.52,1.40という結果で、あきらかな差をみとめなかった。続いて扁桃組織におけるB1Bcellの検討も加えた。CD5およびCD19+ CD38+を用いてFlow Cytometory analisisを行った。現在、2群間に有意な差ははっきりしていない。これらの結果をうけて免疫応答のimbalanceがIgA腎症の病態形成とどのように関わっているのかを探求する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、扁桃摘出術を施行した患者の血液や扁桃組織のサンプルを用いて、PC特異的な免疫応答を測定し、扁桃局所でのホスホリルコリンに対する粘膜免疫応答および樹状細胞、regulatoryT細胞、Th17 helperTcellなどを解析している。それら免疫マーカーのbalanceの制御にはどういう機序が関与しているか解明するのが今後の目標である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究ではIgA腎症における口蓋扁桃の免疫応答を解析し、本症に対する口蓋扁桃摘出術の有効性の指標となる新たなるバイオマーカーを同定する目的に、口蓋扁桃リンパ球のホスホリルコリン(PC)に対する免疫応答を検討してきた。現在浮上している以下の疑問点について実験にて検証していく予定である。 扁桃の何が、末梢血中のTreg Th17バランスをコントロールしているのか?まずIgA腎症のリンパ球採取の際の上清中のサイトカイン分析が必要である。そしてPCに対する免疫応答との関連やPC特異的Thcellの免疫応答について測定していく。 扁桃組織でのクラススイッチの解明についても糸口をみつけたい。以下のプロトコールが進行している。 扁桃からリンパ球を分離し、PCを加えるもの、PCを加えないもの、LPSを加えるものの3郡で比較を行う。培養上清中のサイトカイン測定を行う。INF-α、IL-4、TH-17、TGF-βを測定する。他論文によればIgA腎症と健常人の末梢血を比較した報告でCD4+CD25+Tregは健常人より低く、扁桃摘出後にはCD4+CD25+Tregが増加したが、健常人よりは低かったとのことであり、本研究でもCD4+CD25+Tregについての検討も加える必要があると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
扁桃採取の数が予定より少なかったため、試薬類の補充が予定より少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
サンプル解析のための試薬を購入する予定である。
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